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2014.04.24

「天威無法 武蔵坊弁慶」第2巻 奇怪な清盛に奇怪な鬼若が求めたもの

 かの武蔵坊弁慶を作者流に料理した武村勇治「天威無法 武蔵坊弁慶」の第2巻が発売されました。都で弁慶たちの前に現れた平清盛、そのとんでもないビジュアルと言動に驚かされるのですが、しかし彼の真の顔は…

 個人としては強大すぎる己の力を持て余しつつ、比叡山で無為に日々を送っていた鬼若(後の弁慶)。法然によって山から連れ出された彼は、古戦場で突然襲いかかってきた黒装束の二人組――義経と遮那の双子の兄妹と対決し、世間の広さを知ることとなります。
 平家打倒を狙う彼らと行動を共にすることになった鬼若が都を訪れた時に行き当たったのは、輿に乗せられて大路を行く平家の統領・平清盛…
 なのですが、その姿は隈取りの入った白塗りの顔に赤い長髪というビジュアル系、輿の上から叫ぶ言葉は「下々のみんなぁぁ みんなを愛してるわぁぁぁぁ!!」と、時代を先取りしすぎた傾奇者っぷりであります。

 しかしもちろん、ほぼ一代で武家政権を打ち立て、「平家にあらずんば人にあらず」と言われるようにまでなった男が、単純な傾奇者や博愛主義者であるわけもありません。
 輿の行く先を遮った子供に対して、笑顔で無惨極まりない制裁を加えようとする清盛ですが…


 と、清盛の登場時にはずいぶん驚かされたのですが、この非道ぶりを見せられた際には、むしろ予定調和的な――はっきり言ってしまえば、北斗の拳的な――悪役像と感じてしまい、いささかがっかりしたのは事実。
 ここで鬼若が乗り出して、清盛を叩きのめすのだろうなあ…というこちらの予想は、半分当たり、半分外れました。

 鬼若がその場に飛び出し、清盛の輿を奪ったまでは予想通りでしたが、しかし輿もろとも清盛を連れ去った鬼若は、相手を叩きのめすのではなく、一つの問いをぶつけるのです。
 「強さとは何か」と――

 なるほど、本作の鬼若の行動原理は、(少なくとも現時点は)正義や忠義、あるいは天下取りといったある意味「公」のものではなく、力とは、強さとは何なのか、自分は何者で何ができるのか…という、極めて「私」的なものであります。
 その鬼若が、他者の生殺与奪を自在にする権力者と出会った時にこう問いかけるのは、一見奇怪なようでいて、極めて自然と言うべきでありましょう。

 そしてそのまま清盛に伴われてその屋敷に赴く鬼若。ここで彼を待ち受けているものは…これは実に漫画的ではありますが、しかしその先に清盛が見せるのは彼のもう一つの力、というのも面白い。

 鬼若に置いて行かれた格好となった義経たちの前に、ライバルとなるであろう平教経が登場、初激突という、ある種伝奇的展開ももちろん楽しいのですが、それ以上に、清盛以上に奇怪であり、しかし納得のいく鬼若像には、本作なりの魅力が感じられるのです。


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