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2014.04.02

水滸伝 第23話「西門慶 潘金蓮に出会う」/第24話「潘金蓮 酔って武松を誘う」

 武松が豪快に人喰い虎を対峙し、一躍英雄になった一方で、貧しく暮らす一組の夫婦の姿が描かれて終わった前回。その夫婦の名は、水滸伝ファンにはお馴染みの、武大と潘金蓮――武松の兄夫婦であります。

 使用人として暮らしながらも、そのあまりの美貌から主人とその息子に言い寄られ、嫉妬を買って放逐された上に、町一番のブ男である武大と結婚させられた潘金蓮。
 そんな境遇に周囲から寄せられる好奇の目に耐えかねた二人は、逃げるように他の県に引っ越し、そして越した先でも潘金蓮は家の奥に隠れるように暮らす羽目に…

 という描写が結構な長さで流れた末に、再会する武大と武松の兄弟。町中をパレードする虎退治の英雄と、冴えない饅頭売り…あまりに対照的な二人ですが、しかし二人の兄弟愛は本物。罪を犯して出奔した武松とは久々の再会ですが、大喜びした武大は早速弟を家に連れ帰り、潘金蓮に引き合わせます。

 酒を酌み交わしながら、虎退治の様を身振り手振り語る武松と、彼の物語に本気に手に汗握る武大、そしてそんな二人を優しく見つめる潘金蓮。絵に描いたように幸せな一家であります。(ちなみにここで武松が、少林寺仕込みと称して酔拳を披露するシーンがなかなか楽しい)

 しかし、潘金蓮の境遇を考えれば、それがいかに危ういものであるかは明らかでありましょう。自分の将来に様々な夢を抱いていた女性が、理不尽にそれを奪われ、まったく望まぬ相手と無理矢理結婚させられる…
 そんな彼女の前に、男の中の男とも言うべき快男児が現れたとしたら、その結果は言うまでもありますまい。

 同居することになった武松のことを甲斐甲斐しく世話をする彼女ですが、彼女の内心を知っているためか、どうにも危なっかしい。いや、武松のことを考えながら風呂に入り体を磨く姿は、色々な意味でアウト、というほかありません。

と、そんな日々が続く中、洗濯物を干していて、竿を下に落としてしまった潘金蓮。その下にいたのは、頭に花を挿したいかにもな遊び人風の男。彼女の求めに応じ、ド派手に飛び上がって竿を渡す彼の名は、西門慶――
 そんな二人の姿に、商売の香りをかぎ付けたような隣の伝書屋兼縁結び屋の王婆という、後の展開を思えば目を覆いたくなるような場面で次回に続きます。


 そして続く第24話で描かれるのは、ひたすら潘金蓮の武松に対する想いが高まっていく様。服の直しのための採寸と称して武松に抱きつき、武大が武松に嫁を世話すると言えば取り乱し――
 どんどん歯止めが効かなくなっていく姿が延々と描かれるのは、豪傑たちの活躍を期待する向きにはちょっと困ってしまう展開ではありますが、しかしこれはこれで面白い。

 上で述べたとおり、この行動は、翻弄されるばかりの自分の人生に対して、今度こそ自分の思い通りに動こうという自主性の表れ。一人装って武松を待つ彼女は確かに美しいのですが…しかしそれだからこそ哀しい。
 そしてもちろんその一方で、無上の人の良さを見せる――潘金蓮が望まぬ結婚をしたことを承知している武大の姿を見れば、もちろん彼女の行動を是とするわけにもいきません。特に、純粋に彼女の笑顔を見たいがために買ってきた簪を無碍にされる場面を見れば…
(このくだり、武大が簪を武松に託し、兄からという前に武松が潘金蓮に渡し、一旦喜ばせてしまったのもまた、すれ違いの元なのですが)

 原典ではこの辺りの潘金蓮の行動は、全く同情の余地のない欲得づくのものとして描かれているのですが、単純な悪女ではないものの、しかしやはり…という潘金蓮像は、やはり現代のドラマならではの造形と言うべきでしょう。

 そしてまた、そんな潘金蓮の姿と並行して描かれていく王婆と西門慶の姿の中に、日常の中の陥穽ともいうべきものが浮かび上がるという構造もまた、なかなかに巧みと言うべきでしょう。

 そして、ついに堪えきれなくなった潘金蓮が、兄より先に帰ってきた武松と強引に酒を酌み交わした末、杯以外のものも交わしてみない? と完璧アウト発言をしてしまったところで、次回に続きます。


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