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2014.04.07

「戦国の長縞GB軍」第1巻 戦国のプレイボール 伝説の奇書、漫画で復活!?

 連載開始時から一部で話題となっていた、あの作品が単行本化されました。志茂田景樹が約20年前に発表した「戦国の長嶋巨人軍」を原案とした日高建男「戦国の長縞GB軍」――タイトル通り、長嶋、いや長縞監督率いる球団が戦国時代にタイムスリップするという奇想天外な作品であります。

 物語は1995年、前年度にペナントレースを制した東京グレートベアーズ(GB軍)が、合同キャンプとして自衛隊の実弾演習に参加している場面から始まります。
 そこで何故かタイムスリップしてしまったGB軍が現れたのは、1560年の桶狭間…そう、織田と今川の戦いが始まる寸前に、彼らは現れてしまったのであります。

 しかしそこは長嶋…いや長縞監督、あっという間に状況に適応してしまった彼は、一緒にタイムスリップした戦車ほか近代武装で織田軍を援護、それがきっかけで織田信長の庇護を受けることとなるのでした。

 いつか現代に帰るため、そしてこの時代の人々に野球の素晴らしさを伝えるため、戦国時代で野球を始めようとする長縞監督。新しい物好きの本領を発揮してさっそく野球を取り入れんと、野球奉行を設置して家臣団による野球チームを組織する織田信長。
 ついにGB軍対織田軍の野球対決の火蓋が切って落とされることに…


 現代人が戦国時代にタイムスリップ、それも織田信長に対面というのは、これはある意味定番中の定番。時代ものに野球が登場するというのも絶無ではありませんし、長嶋監督がタイムスリップする小説もほかにもあるのですが――
 しかし、その全ての要素が一つに集まった作品というのは、やはり空前絶後というほかありますまい。

 もちろん、冷静に考えれば無茶苦茶な設定ではありますが、しかしそこに絡むのが、戦国時代きっての進歩人(として描かれることの多い)織田信長であり、そして何よりもあの長嶋監督(がモデルになった人物)であれば、大抵のことは何となくOKに思えてしまうのが恐ろしい。
 ある意味天下御免、「長嶋さんだったら仕方ない」と思わせた時点で、本作の勝利というべきでしょう。

 しかし本作は、そんな飛び道具のみで構成された作品ではありません。ほとんど現代の物資が存在しない中(この点、自衛隊の演習に参加していた最中なので野球道具がほとんどない、という設定が光る)、いかにしてボールを、グラブを作ってみせるか。いかにしてルールを戦国武士に教え込むか。
 そんなシミュレーションを、本作はコミカルに、しかし真摯に丹念に描き出します。
(特に鹿革で作ったボールの感覚にピッチャーがなかなか馴れないというあたり、実に面白い)

 キャラクター面でも、監督の長縞のみならず、選手たちも、実に「らしい」言動を見せてくれるのが楽しく、その一方で、戦国ファンの東風(落合)の知識が、彼らがこの時代で生き延びる契機となるのも面白い。
 戦国武士側も、柴田勝家が豪腕打者として活躍したり、木下藤吉郎が、この時代でほとんど唯一野球の本質を理解する人物として描かれるなど、武将たちのイメージを踏まえて巧みにキャラを立てているのにも感心いたします。

 もっとも、信長はあくまでもGB軍を戦力として見ているという不穏な設定もあり、何よりもGB軍が桶狭間であっさりと近代兵器で今川軍を攻撃したりと、引っかかる点がないわけでもないのですが…


 しかし少なくともこの第1巻の時点では、あくまでも戦いの場は野球場であり、戦国時代で珍プレー好プレーを見せる彼らの姿は、微笑ましさすら感じさせるものがあります。

 本作はとりあえずこの巻に収められた半年間の連載を行った後、現在は休止中の模様。しかしまさにプロ野球シーズンは、いままさに始まったばかり。戦国時代でも、早くシーズン再開して欲しいものです。


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コメント

まさか!のマンガ化ですが、惜しむらくは原作発表から相当年月が経過していて、しかも選手名が仮名なので、東風(落合)のような有名選手でないと「コイツ誰だったかな・・・?」と思わせるのが残念ですね。

投稿: ジャラル | 2014.04.09 21:23

ジャラル様:
本当になぜいま、という気もしますが、しかしこれくらいのメジャーな選手揃いだと結構憶えているものですね。落合…いや東風選手、意外な役回りでした

投稿: 三田主水 | 2014.04.12 22:44

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