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2014.04.14

「戦国SAGA 風魔風神伝」第5巻 二つの死闘、さらば風神

 主家を失い、豊臣家と徳川家の間に挟まれながらも、逞しく、そして清冽な生き様を貫く好漢・風魔小太郎の活躍を描く宮本昌孝「風魔」の漫画版、かわのいちろうの「風魔風神伝」の第5巻、最終巻であります。小太郎と彼を狙う忍びたちとの対決、そして豊臣と徳川を巡る戦いの行方は…

 小太郎を宿敵と付け狙う元真田の忍び・唐沢玄蕃が家康暗殺を図ったことで、にわかに慌ただしくなった小太郎の周辺。果たして玄蕃が討ったのは影武者であったか否か――それを巡る暗闘の中、その力の一端を示した小太郎に対し、服部半蔵正就は、己の命を賭けた禁断の秘法に手を出し、小太郎抹殺を狙います。

 そのために彼が狙うのは、小太郎の旧主、いや今なお主である北条氏姫の身。かくて、氏姫が暮らす里に殺到した服部忍軍と、小太郎たちの最後の死闘がここに展開されるのであります。

 前巻の感想でも触れましたが、半蔵が禁断の秘法に手を出すのも、ここで小太郎と対決するのも、この漫画版オリジナルの展開です。
 これまで原作をきっちりと漫画化してきていただけに、ここにきてオリジナルとなるのは少々残念ではありますが、しかしここで展開する戦いは、さすが名手・かわのいちろうならではのスピード感溢れるアクションの応酬。

 なるほど、常人の域を遙かに超えた小太郎と真っ向から互角に戦うのであれば、これだけのパワーアップは必要でありましょうし、それがあっての、この壮絶なアクション描写かと思えば、これも漫画としては大いにありと言うべきでしょう。

 そして小太郎の死闘はこれに留まりません。彼を倒すため、いや、天下に名を轟かせるためにど派手な陰謀を企んだ唐沢玄蕃との最後の対決もまた、玄蕃がやはりオリジナルのパワーアップを遂げたこともあって、宿敵同士の激突に相応しいもの。
 小太郎vs半蔵が剛と剛とすれば、こちらは剛と柔――対照的な二つの戦いを描き分ける作者の業も見事であります。

 そして、見落としてはならないのは、ここで相争う小太郎・半蔵・玄蕃、その三人がそれぞれ、異なる形で肉親の情というものを背負っている――全く背負っていない、というのも一つの形として――ということでしょう。
 忍びに人の情は不要、と申します。しかし本当にそれは不要なのか、そして持たずにいることができるのか――その答えは、二つの戦いの結果(とその後に描かれるもの)に明らかでありましょう。


 冒頭に述べたように、残念ながら本作はここで完結となります。原作で言えばまだ中盤、秀吉が没し、家康が天下を取った後も、まだ小太郎の戦いは続くのですが――
 しかし、オリジナルな展開を見せたことで、この漫画版は漫画版で、描くべきはそれなりに描けていると、そう感じられます。

 名残は尽きませんが(半蔵とは別の形で強敵となる柳生宗矩が登場する前に終わってしまったのは残念!)、もう一つの「風魔」を見せてくれた本作、私はここまで読めてよかったと感じているところです。


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