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2014.04.12

「SAMURAI DEEPER KYO」応募者全員サービス下巻 そして受け継がれたもの、残ったもの

 文庫版「SAMURAI DEEPER KYO」全巻購入者対象の応募者全員サービス、新作書き下ろし漫画の下巻が手元に届きました。収録されているのは「四聖天編」の後編、そして「壬生一族編」――どちらも本編の幕間を埋めるものとして、ファンであれば見逃せない楽しい短編です。

 まず上巻に引き続き「四聖天編(後編)」で描かれるのは、ほたるが四聖天に加わった直後の物語であります。
 狂の強さに興味を持ち、強引に狂・梵・アキラに同行することとなったケイコク…いやほたる。鬼眼の狂を倒すためと称し、狂の背中に張り付くほたる(それに怒り狂うアキラが毎度のこととはいえおかしい)に対し、狂がかけた言葉は――

 冷静に考えれば、本編ではほとんど描かれなかったほたるの四聖天入り。その様がここで描かれるだけでなく、前編でさらりと触れられた狂の「横」が意味するものが活きてくる展開が実に楽しいのです。


 そして「四聖天編」で描かれるのは、本編最終回と、単行本で描き下ろされたエピローグの間に位置する物語であります。
 全ての戦いが終わり、狂も帰還した後に、壬生一族の都に招かれたレギュラー陣――四聖天、紅虎に真尋、幸村にサスケ、時人、阿国、そしてゆや。彼らの前に現れた辰伶が見せたもの、それは…

 というわけで、ここで描かれるのは辰伶が吹雪から受け継いだ壬生の善き精神の象徴ともいうべき水舞台。
 かつては紅の王のために舞われたものをいま彼が復活させた理由は何故か? さらに相次ぐ乱入者で大荒れの舞台の先に、集った者たちが見るものはなにか…全て書いてしまうのは無粋の極みですので伏せますが、これは本作のもう一つのエピローグとして文句のない内容であります。

 本編の終盤で明示された、個人の信念・生き様が切り拓いたものが、後に続く者たちにとっての道に――歴史になるというテーマ。
 どれだけぶっ飛んだことをやろうとも、それでも時代もの、歴史ものとして私がこよなく本作を愛するゆえんであるこのテーマが、この短編の根底にもあるのが、実に泣かせてくれるのです。
(さらに、故人たちの出演も、これ以外ないという見せ方ではあるのですがこれまた泣かせる)

 そしてもう一つ、ここにきて初めて明かされる(本編の時点で設定されていたものの入りきらなかったという)四本の妖刀村正にまつわる村正の真意などにもただ感心するばかりで、いや、ファンとして本当に良いものを見せていただいた、という気持ちです。


 これにて「SAMURAI DEEPER KYO」が本当に最後、というのはやはり寂しいことではありますが、最後の最後まで作者の本作に対する愛情が伝わってくる作品揃いで、これで笑顔でお別れができる――そんな気持ちになれた好企画でありました。



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