「官兵衛の陰謀 忍者八門」 吉備魔宝大戦! 忍術vs妖術
関ヶ原の戦から一ヶ月後、伊達政宗の愛娘・五郎八姫が、怪人・魔宝斎率いる一党に拐かされた。日本を二つに割るという吉備魔宝大戦を引き起こそうとする魔宝斎と黒田官兵衛の陰謀に対し、隻腕の少年忍者・友海と暗号師・蒼海のコンビは、姫が幽閉された吉備山中の古代城に向かうのだが…
日本消滅の陰謀が秘められた秀吉と千利休の暗号に挑んだ「秀吉の暗号 太閤の復活祭」、十種神宝を奪取し五十対三万の籠城戦を戦った「天海の暗号 絶体絶命作戦」などで大活躍した友海・蒼海コンビの待望の新作が登場しました。
関ヶ原の戦から一ヶ月後、東軍に参加した伊達政宗(シリーズのレギュラーでもあります)の屋敷を襲撃した謎の一団。政宗の愛娘・五郎八姫を誘拐し、「吉備魔宝大戦」なる謎の戦いへの誘いを残した彼らを率いるのは、かつて秀吉に仕えたという伝説の妖術師・魔宝斎でありました。
魔宝斎らの本拠、吉備の山城・鬼ノ城に送り込んだ忍び部隊も簡単に壊滅させられ、赫怒した政宗が軍勢を送り込まんとしたのを制止したのは、家康の懐刀・柴智安。
魔宝斎の背後に、かの大軍師・黒田官兵衛の存在を看破した彼は、既に友海と蒼海を吉備に送り込み、姫の奪還を命じていたのでありました。
二人を待ち受けるのは、魔宝斎の配下の妖術師団、さらにかつて吉備津彦命(桃太郎)に滅ぼされた温羅を奉じ、前作の強敵・酒呑童子をも軽々と倒す力を持つ温羅衆、さらに謎の「頼光党」。
彼らに挑む友海と蒼海は、互いに対立する忍びたち――北条氏復興を狙う風魔一族、朝廷の影である白河衆の力を借りるべく、単身彼らと渡り合います。
一方、温羅を倒すことができる神剣を求めて別行動を取った蒼海は、一連の事件の背後に存在する巨大な陰謀と、魔宝の正体を知るのですが――
と、ここまでで全体の半分程度。作者の作品は、物語を彩るガジェットの量と、それを突き動かす熱量がいずれもけた外れなのですが、本作は一冊ものということもあってか、その濃度と密度が桁外れ。
一気に読むには相当の覚悟と気合いが必要となる、しかし読み始めたら一気に読まずにはいられない――そんな恐ろしい作品なのであります。
(おそらくは大河ドラマにタイミングを合わせた作品だとは思いますが、それでこの内容なのが頼もしい)
さて、作者の作品の一つの特徴として、妖術や魔術といった超自然現象的なものがわりあいよく登場する一方で、物語の根幹を成す謎や秘密は、きっちりとロジカルな点が挙げられます。
本作においても、物理法則を無視したような奇怪な術を操る魔宝斎のような存在が登場する一方で、彼が、そして黒田官兵衛が巡らす陰謀の正体は、いずれもきちんと理に落ちるものとなっているのです。
魔宝の正体とは何か。吉備魔宝大戦が起きると何故日本が二分されるのか――物語最大の秘密はもちろんのこと、そもそも何故五郎八姫が狙われたのかという点にも答えが用意されている点など、ミステリ的な味わいすら感じさせるものであります。
そこに加えて、忍者もの、不可能ミッションものとしても猛烈な盛り上がり方を見せるのですから、鬼に金棒。
上で述べたとおり、物語の基本的な秘密はちょうど全体の半分あたりで判明するのですが、いかにその陰謀を阻止するか、残り半分を使って一気呵成に繰り広げられる大活劇は、なかなかに痛快であります。
もっとも、その一方で粗さがあるのもまた事実。次から次へと判明する新事実や裏設定は、むしろ後付け的な便利さを感じさせるものであり、本作のような歴史の陰の謎や秘密で盛り上げていく物語においては、少々引っかかるものであります。
また、(友海が凄腕の火薬師という設定はあるものの)火薬万能なのも、前作同様に気になる点です。
この辺りも含めると、好みは大きく分かれるのではないかと思いますが――しかし、それでもこの加減を知らない伝奇ぶりは、大いに賞すべきものでありましょう。
シリーズ名も「○○の暗号」から「忍び八門」に改め、新たに展開されることとなった友海と蒼海の冒険。
本作の結末を読めば、早くも続編が気になるのは間違いないところであり――果たして次はどんな危機が二人を、日本を待ち受けているのか、そしてそれをいかに解決してみせるのか…楽しみで仕方なくなるのもまた、間違いのないところなのであります。
「官兵衛の陰謀 忍者八門」(中見利男 角川春樹事務所時代小説文庫) Amazon

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