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2014.05.07

「鬼舞」第2巻 見習い陰陽師たちの合宿騒動

 先日「呪天編」が完結した瀬川貴次の「鬼舞」シリーズを、厘のミキが漫画化した第2弾であります。この巻のベースとなったのは、原作第4巻の「見習い陰陽師と試練の刻」――山中の寺で再試験を受けることとなった若き陰陽師たちの引き起こす大騒動が描かれることとなります。

 地方から都に出てきた少年陰陽師…の卵・宇原道冬。都で住むこととなった家は付喪神だらけの上に亡霊付き、陰陽寮では周囲のいびりを受けたり、奇怪な鬼に襲われたり――
 と散々ながら、安倍晴明の次男・吉昌と知り合ったことで、少しずつ成長していくこととなります。

 しかしそれでもまだまだ修行は始まったばかり、道冬は陰陽寮で行われることとなった試験で、思わぬアクシデントから動揺して最下位に。
 かくて、彼を含む陰陽道・天文道・暦道の最下位の生徒は、それぞれ得業生と組み、一泊二日の再試験に臨むことになるのでした。


 どうも原作を読んでいると、中心となっている鬼関係のエピソードに目を奪われて忘れがちなのですが、本シリーズは陰陽寮を舞台に、道冬ら見習い陰陽師たちの姿を描く、一種の学園ものの要素もある作品。
 そう考えてみると、今回のエピソードは、試験に合宿での再試験など、そうした学園ものの側面が最もよく現れているとも言えます。

 冒頭に述べたように、本作は原作でいえば第4作。ということは第2、3作が飛ばされているということになりますが、学園もの的要素の強いエピソードを原作とすることにより、その辺りの違和感は全く感じさせない構成となっています。
 もちろん、原作と比べてみると、こちらは少なからぬ部分がオミットされています。特に、原作ではシリーズの本筋である「鬼」の中心人物の二人がここで初登場するのですが、こちらでは跡形もなしなのですが…

 しかし、それでも違和感を感じさせないのが面白い。これはもちろん、この漫画版のストーリー面のアレンジの仕方が巧みな点が大きいのですが、同時に、キャラクターたちの何とも楽しく賑やかなやりとりが、漫画として魅力的な点も見逃してはならないでしょう。

 特に今回は吉昌だけではなく、その兄の吉平の存在もクローズアップ。道冬にとっての直接の先輩として、道冬とコンビを組むことになるのですが、それが兄にコンプレックスを抱く吉昌には面白くなく…
 という辺りの人間関係のこじれ(と言っては大げさなのですが)が、この巻の一つの見所といって良いかもしれません。
(また、今回もえらく道冬が可愛らしく描かれているおかげで、微妙に怪しげな雰囲気なのですが…)


 それにしても残念なのは、この漫画版がこの第2巻でひとまず完結なことでありましょう。
 確かに、原作のエピソードをそのまま漫画化するのは難しいかもしれませんが、これだけ原作の持ち味を巧みに描き出しているのであれば、オリジナルエピソードでも…
 というのはなおさら難しいのは承知の上ですが、そう感じさせられた漫画版なのであります。


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