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2014.05.10

「戦国武将列伝」 2014年6月号 呪術と自衛隊と鬼と

 早いもので、隔月で刊行の「戦国武将列伝」誌も、最新号発売の時期となりました。最新号の6月号は、黒田官兵衛の妹を描いた大竹直子の特別読切「八朔の雛祭り」以外は通常の連載陣のほぼ平常運行ですが、しかしそれでも読み応え十分であります。今回も、特に印象に残った作品を取り上げましょう。

「孔雀王 戦国転生」(荻野真)
 物語の中心人物ともいうべき信長のオリジンも描かれ、いよいよ物語の核心に迫りつつある本作。死んだはずの斎藤道三の式神であった濃姫により稲葉山城に連れ去られた信長ですが…

 その前で展開されるのは五番の呪術能。しかしそれを舞うのは、それぞれかつて信長が殺した、信長の周囲で死んだ者たち。
 能の持つ呪術的性格に着目した作品は少なくないかと思いますが、本作で描かれるそれは、演じるのがそれぞれ信長に恨みを呑んで死んだ者たちであることで、ダイレクトに呪術としての恐ろしさを感じさせてくれるのが実に面白い。

 まだまだ続く呪術能、果たして最後まで信長は見届けることができるのか…そして後を追う孔雀たちは間に合うのか。いや、やはり伝奇活劇の大ベテランらしい、次回が大いに気になる展開です。


「戦国自衛隊」(森秀樹)
 この最新号で一番インパクトがあったのがこの作品。これまでがプロローグだとすれば、連載第三回の今回からがいよいよ本番…というよりいきなりクライマックスに突入した印象であります。

 野武士から百姓を守ったものの、「今」がいつか、何故タイムスリップしたのか、そしてどうすれば現代に戻れるのか――それもわからぬままだった自衛官たち。
 しかし天に輝く彗星から割り出したその「今」は…まさに本能寺の変の直前!

 と、ここで原作読者であれば、本能寺の変と聞けば「おっ」と思うのではありますまいか。詳しくは述べませんが、原作で重要な意味を持つあの事件が、ここで全く別の意味を持って立ち上がってくるのが――すなわち、戦国の自衛隊にとって全く違う形で絡んでくるのが実に面白い。

 …そしてそれだけでなく、今回は名台詞、怪台詞のオンパレード。「すごいぞタイムスリップ!!」「そりゃすごい介入だ!!」「信長、俺について来い!!」そして「ん――○○○」。
 いやはや、内容そのものの面白さもさることながら、こういう方面でも攻めてくるとは、全く隙のない作品であります。


「鬼切丸伝」(楠桂)
 前回登場したのは豊臣秀次でしたが、今回はそれとほぼ同時期か少しだけ遡った千利休の娘・お吟にまつわるエピソード。
 彼女を扱った作品としては、今東光の「お吟さま」が最も有名ではないかと思いますが、あちらでは高山右近に恋したお吟が、本作で恋した相手は石田三成なのであります。

 しかもこの三成、秀吉に逆らう者に対しては殺生も厭わぬ「鬼」のような男。そして三成がお吟の前に現れた理由は、彼女を側室にと望む秀吉の意を汲んでなのですが…

 千利休の死の理由については諸説ありますが、その一つが、お吟を側室に差し出すのを拒んだためというもの。本作においてはそれを三成へのお吟のねじれた恋情ゆえと設定し、そこからさしもの鬼切丸も驚くような鬼の出現に結びつけていくという展開が見事としかいいようがありません(そこに至るクライマックス直前の惨劇も、彼女にまつわる無惨な巷説を巧みに絡めているのがイイ)。

 鬼切丸の吐き捨てるようなラストの台詞も良く、これまでの四話の中でも一番の出来ではありますまいか。


 というわけで、特に印象に残っただけでもこれだけの作品が並んだ「戦国武将列伝」。次号は篁千夏&叶精作の女海賊ものの読み切りが掲載される模様ですが、これはまた随分と濃い作品になりそうで、早くも楽しみなところです。


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