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2014.05.22

「ニコライ盗撮」(その一) 剣豪写真師への三つの依頼

 ロシア皇太子ニコライ来日が目前となった頃、志村悠之介は伊藤博文からロシア艦の撮影を依頼される。さらに山形有朋、西郷従道からも別々の依頼を受ける悠之介。それらはいずれも西郷隆盛生存説に結びついていた。それらの動きに不穏なものを感じ、ニコライを追う悠之介の眼前で大事件が――

 明治時代を舞台に、元武士の写真家・志村悠之介を主人公とする「盗撮」三部作の第三作となる作品であります。
 第一作「西郷盗撮」で西南戦争を背景に西郷の素顔を巡る謎を、第二作「鹿鳴館盗撮」では、鹿鳴館華やかなりし陰で展開するある陰謀を、それぞれ描いてきたこのシリーズですが、本作においては前二作の流れを踏まえた、いわば集大成とも言うべき物語が描かれることとなります。

 今は浅草で妻の小夜とともに写真館を営む悠之介のもとに、前作で不思議な因縁のできた伊藤博文から持ち込まれた、長崎に入港したロシア艦の撮影依頼。それは、行方不明となった新造艦・畝傍がロシア艦とされ、さらにそれにかの西郷隆盛が乗って帰ってくるという噂に基づくものでありました。

 さらに、伊藤の政敵たる前総理・山形有朋からは、どこからか流出した――かつて悠之介が撮影したものに加工を加えた――隆盛の写真の出所探しを、そしてその隆盛の弟・従道からは、銀座で目撃されたという隆盛の姿の撮影を依頼される悠之介。
 かくて、いずれも大西郷にまつわる事件を追うことになった悠之介ですが――長崎で不穏な動きを見せていた大西郷を慕う薩摩士族たちが、ニコライ暗殺を狙っていることを察知した彼は、ニコライを追って大津に向かうことになります。

 そこで彼らの暴挙を阻止したかに見えた悠之介ですが、その時…!


 明治24年、日本を訪れたニコライ皇太子が、警護の巡査・津田三蔵に切りかかられた大津事件。本作は、ちょうど物語の中間地点で描かれるこの近代史上の大事件を巡る謎と陰謀が描かれていくこととなります。

 そのニコライ来日に当たり実際に世間に広く流布された、実はシベリアで生きていた西郷隆盛が畝傍に乗って帰ってくるという不気味な噂。
 第一作で西郷の存在に迫った悠之介が乗り出すにふさわしい題材ですが、しかし彼と事件の関わりはそれだけに止まりません。かつて西郷に仕え、それが縁で結ばれた小夜が、一連の事件の陰に見え隠れしているのですから…

 長くなりますので、次回に続きます。


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ニコライ盗撮


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