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2014.06.15

「姫路城リビングデッド」第1巻 正真正銘、対ゾンビの籠城戦始まる

 戦国の世が終わり、徳川幕府が誕生したばかりの頃、完成したばかりの姫路城を突如包囲した、奇怪な屍人たちの群れ。それを指揮するのは、いずれも死んだはずの戦国の英雄たちだった。そして図らずも姫路城に籠城することとなった人々の中には、城を愛してやまないただの農民(?)・七尾虎次がいた…

 既に時代ものにゾンビというのは、定番の題材…というのはさすがに大げさかもしれませんが、しかしそのなかなかに意外な組み合わせが、かえって不思議な魅力を生み出すことは、これまでこのブログでも取り上げてきたところであります。
 そしてその最新の成果が、本作「姫路城リビングデッド」であります。

 時は17世紀初頭、本多忠政により姫路城が完成した直後とありますから、大坂の陣で豊臣家が滅んで数年のことでありましょう。
 今日も今日とて、姫路城の美しさに惹かれては城に忍び込み、門番に叩き出されていた城マニアの少年・虎次は、そこで奇怪な屍人の兵士に襲われます。

 その場は梟を連れた謎の青年・梟司に救われた虎次ですが、しかし時既に遅く、城下に次々と出現する奇怪な屍人の兵士たち。
 いつの間に出現したか、姫路城を包囲していた謎の軍により送り込まれた屍人兵たちは城下を蹂躙、辛くも逃れた人々は姫路城に立てこもることとなるのですが…


 ゾンビものといえば、籠城戦はつきものであります。基本的に圧倒的に数の多いゾンビ側に対し、人間側にまずできることはといえば、逃げること、そして立て籠もること――
 それが物語途中の出来事であれ、物語を通じての主題であれ、これまで無数のゾンビもので籠城戦は描かれてきました。

 しかし、そんな中でも、そして冒頭に述べたとおり、既にゾンビ時代ものも少なくないにもかかわらず、本当にゾンビ相手に籠城戦を行うのは、本作が始めてではありますまいか。
 しかも舞台はその美しさ、堅牢さにおいて史上に残る姫路城――いやはや、この組み合わせの時点で脱帽であります。

 そしてこの籠城戦に参加する面々もまた個性的。城マニアでどうやら築城術の心得もあるらしい主人公・虎次に、屍人たちとある因縁を持つ梟司。剛力を持ちつつも心優しき門番・小熊雪治郎。
 本作オリジナルの登場人物だけでもなかなか面白いのですが、そこに本多忠政・忠刻の城主親子、そして彼らの客分である宮本武蔵が加わり、さらに姫路城といえばあの伝説の…まで登場するのですから、顔ぶれをみるだけでも胸が躍ります。
(特に武蔵の登場は、その手があったか! と)


 もっとも、引っかかる部分がないわけでもありません。本作で姫路城を包囲する謎の軍団――それを率いるのが、信玄・謙信・信長ら、甦った戦国オールスターというのは、本作のウリの部分かとは思いますが、しかしあまりにも豪華すぎてかえって統一感が感じられないようにも思います。

 虎次に力を貸すのが上で触れた伝説の…というのも、人間とゾンビの真っ向勝負にはちと余計な要素のようにも感じられます(それ以前に、虎次の髪型が個人的には気になって仕方ないのですが…)


 しかし物語はまだ始まったばかり。ここで私が感じた違和感も、この先にきちんと説明される時がくるのではないか…と感じています。

 というのも、上で触れた本多忠刻がこの籠城戦に闘志を燃やす理由に、妻の千に、再び落城の悲しみを味合わせないため、という描写があるのを見るに、作者は相当にわかって描いているのではないか、と感じられるためなのですが…

 何はともあれ、いよいよ始まった史上初の籠城戦。ラストでは思わぬ大物が城内にいたことも判明し、さてこの先いかなる戦いが、人間模様が描かれるのか――これはこの先が楽しみな作品です。


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