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2014.06.09

「妻は、くノ一 最終章」 第3回「届かぬ想い」

 考えてみれば早いものでもう全5回の折り返し地点まできた「妻は、くノ一 最終章」。相変わらず引き裂かれたままの彦馬と織江のみならず、周囲の人間たちの運命も、入り乱れて物語は進んでいくことになります。その台風の目は、やはり静湖姫…?

 江戸に漂着した幽霊船の中に残されていた松浦家の紋入りの割り符。それを奇貨として静山を追いつめようとする奥右筆は、幕府船奉行・向井将監に松浦家の取り調べを依頼します。

 実はこの幽霊船、静山が平戸で南蛮に向かう天竺丸のカムフラージュに何艘も流したものの一つ。正直なところやり過ぎ感がありますが、真のやり過ぎはここから。
 霊岸島で幽霊船を目の前にして行われた詮議に現れた静山は、舞台仕込み(?)のオーバーアクションで切々と幽霊船に乗っていた者たちの無念を説き、海の男と男にしかわからぬ熱い想いを受け止めた将監は号泣。

 完全に静山を信頼してしまった将監は、彦馬のところから出てきたオランダ語の書状のことを問おうとする奥右筆を越権と叱責、静山にとっては一石二鳥の結末となったのでした。

 …しかし前作の時点から思っていましたが、奥右筆が静山一人を潰すためにここまでやるのは(特に奥右筆の役目的に見て)いかがなものなのでしょう。
 これが同じ役回りを、原作に登場した鳥居耀蔵がやるというのであれば、まあ鳥居様だから…と納得もできるのですが。

 閑話休題、うまく乗り切ったものの、危険を感じ取った静山は天竺丸の出航を早めることに決定。しかし彦馬はすぐに平戸に行けという静山の命に逆らってまで、織江を探し続けます。
 当の織江は相変わらず彦馬を見守っているものの、前回の出来事が尾を引いて――

 と、ひたすらシリアスな展開をひっかき回してくれるのが、その前回の出来事を引き起こした静湖姫。侍らしくない腰抜けと見下していたはずの彦馬のことがいつしか気になり、すっかり胸の中では大きな、唯一の存在にまで膨らむことに…
 そんな想いを周囲に気取られまいと完全に面白い人状態になってしまった姫の姿と、それに気づいているのかいないのか、怪訝な顔の静山の対比も面白く、重い展開の続く本作においては、ほっとできる数少ない貴重な展開であります。

 そして運命の悪戯か、直接顔を合わせることとなる静湖と織江。織江が身を寄せる干物売りのおつるが、破落戸に絡まれているのを助けた(…のは供侍で、またこのくだりがコミカルで楽しかったのですが)静湖は、おつるの小屋に顔を出すことになったのであります。

 そこで始まる女子トークの中、ついつい彦馬(とはもちろん語らぬものの)への熱い想いを語ってしまう静湖。前回の静湖と彦馬の姿を見ている織江は、何とも複雑な表情でそれを見つめ、自分は身を引くべきではとまで思い詰めるのですが…

 しかし、町で織江が見かけたのは、道具屋に並んでいる彦馬の宝物であった望遠鏡。そして織姫を求める彦星のことを歌う芸人の姿――これは、彦馬が織江を探すために望遠鏡を売り払い、その金で人を雇っていたもの。

 しかしそれがかえって御庭番の目を惹きつけ、白瓜の寒三郎に襲われる彦馬の前に、はっきりと姿を現し、彼を庇ってすっくと立つ織江の姿――! 
 これこそは、彼女の想いをはっきりと示すものでありましょう。

 その後のアクションシーンが、チャンバラとは異なる忍者のアクションをなかなか良い動きで見せながらあっさり終わってしまったのは残念なものの、二人の関係性を示す良いシーンと言ってもよいのではないでしょうか。

 しかし寒三郎を退けたものの、再び姿を消した織江。果たして平戸に向かうその前に、二人は再会できるのか…まだまだ先は見えません。


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