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2014.06.16

「運命のひと 姫は、三十一」 消えゆく人々、崩壊する世界

 現在放映中の「妻は、くノ一 最終章」においてまさかの(?)活躍を見せている松浦静山の娘・静湖姫が謎解き屋として活躍する「姫は、三十一」シリーズもいよいよクライマックス目前。今回の事件自体も相当に奇妙なものではありますが、それ以上に静湖に大きな運命の変転が訪れることになります。

 つまらない依頼ばかりのところに退屈していた中、とある長屋の大家が静湖のところに持ってきた依頼。それは、その長屋の住人8人が一晩にしていなくなり、そっくり別の住人に入れ替わった謎の解明でありました。

 確かに奇妙ではありますが、一見なんら事件性のないこの一件の背後に、容易ならざる大事件が潜んでいるのでは、と睨んだ(妄想したともいう)静湖は、勇躍この謎に挑むこととなります。
 新しい住人の一人に、恋人候補の瓦版作者がいたことから、彼を足がかりに調べを進めていく静湖ですが、しかし調べれば調べるほど、浮かんでくるのは新旧住人の奇妙な素顔と人間関係。

 さらに長屋に関連すると思われる死体が見つかり、さらに瓦版作者が何者かに襲撃されるに至り、正体不明の一件は、明確に事件性を帯びていくのですが…


 と、どんどん大がかりになっていく謎解きパートの面白さもさることながら、何よりも見逃せないのは、静湖を巡る恋模様であります。
 三十一歳まで独身で過ごしてきたものの、数万年に一度のモテ期に当たって次から次へと恋人候補が登場してきた静湖。その数たるや、十人を軽く越え、人物紹介がなければ、全員はとても把握できなかったのですが――それが本作においては、次々と静湖の周囲から去っていくことになります。

 ある者はよんどころない事情で自ら去り、ある者は静湖の側から冷め、またある者は別の相手とカップルになり…そしてまたある者は、静山と静湖の敵に回る。

 これまでが賑やかであっただけに、彼らの退場ぶりは相当の崩壊感すら感じさせるものですが、それはとりもなおさず、静湖の周囲の世界が崩壊していくことにほかなりません。
 そして、ここに来て描かれることとなる、静湖の真情が切ない。「姫は、三十一」――そこに込められた想いが溢れ出す場面は、まさに本作ならではの、本シリーズがこれまで積み上げてきたものあっての、美しくも哀しい名シーンと言えましょう。
(もう一つ、これまで散々笑わせてくれたお約束展開が、ここにきてグッとくるような泣かせどころに転じるのも実にイイ)


 ラストには、ある意味静湖にとって最も近しかった者までも去り(その去り方がまた妙なリアリティが…)、ついにほとんど一人となってしまった静湖。
 三十一歳の年も残りわずか、彼女にとって本当の運命のひとは現れるのか、静山を、静湖を狙う悪意に打ち勝つことはできるのか…
 次巻、いよいよクライマックスであります。


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