「江戸の陰陽師 風流もののけ始末帖」 陰陽師、大仕掛けでもののけに挑む?
安倍晴明の師匠・賀茂忠行の血を引きながらも、江戸時代の今では貧乏暮らしの青年・賀茂柳太郎。一旗揚げてやろうと江戸に出てきた彼に声をかけたのは、両親を殺されたという狸の娘。兄が御用聞きにとり憑いて悪事を働いていると聞かされた柳太郎は、謎のご隠居さんの力を借りて事件解決に挑むが…
陰陽師というのは今ではすっかりメジャーな題材となりましたが、しかし江戸時代を舞台とした陰陽師ものというのは、まだまだ珍しいものであります。
というのも、徳川幕府の体制下の陰陽師は、平安時代のような国家陰陽師として帝に仕え、時に政治にまで影響を与えた時代に比べればその地位は低いもの。安倍晴明の血を引く土御門家は残っていたものの…
と、そこで登場するのが本作の主人公・賀茂柳太郎であります。
その姓を見ればわかるとおり、かつては土御門家と勢力を二分した賀茂家の血を引く青年なのですが――江戸時代には往事の勢いをすでになくした賀茂家。既に両親もなく、天涯孤独の柳太郎は、思い切って江戸にやってきたのですが、そこで彼を待っていたのはもののけ絡みの奇妙な事件の数々と、これまた奇妙な人々との出会いだったのでありました。
と、そんなわけで本作で描かれるのは、柳太郎が江戸で出くわした四つの物語、四つの怪事件。復讐のため人に憑いた化け狸、奇怪な傷のついた子供の死骸、千里眼で荒稼ぎする男、貧乏神にとり憑かれた娘――
これらの事件の陰、この世の裏側で蠢くもののけたちを、柳太郎の陰陽の術が打ち砕く!
…とはならない、ほとんど全くならないのが本作のユニークな点であり、最大の特徴であります。
何しろ柳太郎は京から江戸に出てきたばかり、江戸の様子もほとんどわからない状態。そんな状態の彼を教え導く存在なしには、まず活躍のしようもないのですが…
ここで登場するのが、謎の怪人物・ご隠居さんであります。
作中では「ご隠居さん」としか名乗らぬこの老人、いくつもの店を持つなど暮らしには困らぬ様子の飄々とした人物。どうやら何かしらの術を心得ているらしく、柳太郎が悩んでいるところにどこからともなく現れては、知恵と力を貸すのですが…そのやり方がまたユニーク。
大道具師と化粧師と役者――常に塗笠をかぶった配下の三人組を使って大舞台を作り、そこに相手をおびき寄せて文字通り一芝居打つことで、事件を解決に導くのであります。
陰陽師、陰陽道といいつつ、そして人外のもののけを相手にしつつ、一種の大がかりなペテンでもって事件を解決してしまうのが、実に面白いアイディアだと思います。
とはいえ、このご隠居さん、そして柳太郎のキャラクターがつかみどころがないのが、少々困りどころの部分もあります。
二人のすっとぼけぶりは楽しいのですが、これはもう勢いだけで喋ってるのではないかという部分もありますし、キャラクターやストーリーがかっちりしたものを期待する向きには、あまり合わない作品かもしれません。
(ストーリー面でいえば、第2話のトリックはあまりに無理があるかと)
もっとも柳太郎はまだまだ駆け出し陰陽師。色々な面で腰の定まらない青年ではあります。
そんな彼の成長物語…にはあまりならないような気がしますが、彼がご隠居さんのうつ一芝居でこれからどのような役割を果たすのか、そして見事一本立ちして見せるのか――
この先も気楽に、肩の力を抜いてつきあっていくべき作品でありましょう。
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