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2014.07.14

「安倍晴明あやかし鬼譚」(その一) 晴明と紫式部、取り合わせの妙を超えるもの

 都で頻発する怪異と奇怪な人死に。それと時を同じくして安倍晴明は自分が「光の君」と呼ばれる夢を見る度に若返り、陰陽師としての力を失っていく。謎の弥勒法師が暗躍する中、うち続く怪事は「源氏物語」と奇怪な符合を示していく。果たして晴明は絡み合う謎を解き、都を守ることができるのか?

 今から13年前に「源氏夢幻抄 安倍晴明伝」のタイトルで刊行された作品が改題文庫化された作品であります。実は私は今回が初読なのですが、それを土下座して詫びたくなるほどの作品、物語と現実が複雑に入り乱れる平安伝奇の快作です。

 大陰陽師として知られながらも、齢84となり、数年前から衰えを隠せない晴明。しかしある晩、自分が「光の君」と呼ばれる少年となった夢を見た晴明が目を覚まして知ったのは、いかなる不思議か、彼の体が壮年のそれに若返っているという事実でありました。

 一方、その頃都を騒がせていたのは、大内裏北面の不開の門が何者かによって開かれ、さらに突然人々が命を落とす鬼撃病の流行と、数々の怪異。
 息子の吉平とともに怪異を祓うべく挑む晴明ですが、しかしうち続く怪異に手を焼くばかり。そればかりか、幾度も光の君の夢を見るたびに彼は若返り、そして同時に陰陽師としての力を失っていくことに…


 貴族たちが陰湿な権力闘争を続け、姫宮たちが帝の寵を巡って対立する中、都を滅ぼさんとする何者かの陰謀に陰陽の技を以て立ち向かう…
 というのは安倍晴明もの、というより陰陽師ものの典型的なパターンでありましょう。

 本作も表面的にはその系譜に連なるものではありますが、しかし類作とは大きく異なる魅力があります。
 それは、本作において、「源氏物語」が大きな意味を持つ点であります。

 本作にも描かれているように、晴明は当時としては相当に長寿を保った人物。それ故、彼と接点のあった――あるいは彼と同時代を生きた歴史上の有名人は少なくありません。
 あるいはこの点も晴明を主人公とした作品が引きも切らない理由の一つかもしれませんが、それはともかく、紫式部との共演はなかなかに珍しく、それだけでも大いに胸躍るものがあります。


 しかし本作の魅力は、そうした取り合わせの妙に留まりません。
 本作において、晴明は夢の中で光の君=光源氏と一体化して物語の一部を体験し、そして同時に現実において、あたかも「源氏物語」の内容を敷衍するような出来事が頻発することになります。

 いや、そればかりか、紫式部が発表する前の草稿に、現実の出来事がいつの間にか書き込まれ――ここに現実と物語は複雑に入り交じり、互いに影響を与えながら、互いを変容させていくのであります。

 以下、長くなりますので次回に続きます。


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安倍晴明あやかし鬼譚 (徳間文庫)

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