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2014.08.30

『おそろし 三島屋変調百物語』 第1夜「曼珠沙華」

 宮部みゆきの連作ホラー時代劇をドラマ化した『おそろし 三島屋変調百物語』の放映が始まりました。原作のファンということもあり、私も非常に楽しみにしておりましたが、この第1回「曼珠沙華」を観た限りでは、期待以上の作品となりそうな予感であります。

 本作の舞台となる三島屋は、江戸神田三島町に店を構える流行の袋物屋。その三島屋の主人・伊兵衛夫婦の姪である主人公・おちかは、ある事件が元で川崎宿の実家を離れ、三島屋に身を寄せることとなります。
 三島屋で奉公人に混じって忙しく働くおちかですが、ある日、伊兵衛が急用で店を離れた際に訪れた客の相手をしたことで、彼女の運命は思わぬ形で変わっていくことに――

 というのが本作の基本設定。既にシリーズ三作が発表されており、原作ファンには既にお馴染みの内容ではありますが、このドラマ版も、この設定に忠実に展開していくこととなります。
 そして今回の「曼珠沙華」は、いわばシリーズのプロローグとも言うべき内容であり、原作で読んだ際には、他の収録作に比べれば少しだけ軽めの内容と感じたのですが…いやはや、このドラマ版ではしっかりと怖かった。

 先に述べたとおり、伊兵衛の客・藤兵衛の相手をすることとなったおちか。年相応に落ち着いた雰囲気の藤兵衛は、しかし三浦屋の庭に咲く曼珠沙華の花を見た途端に、発作でも起こしたような恐怖の表情を見せます。
 やがて落ち着きを取り戻し、おちかの中に自分と同じものを見たのか、これまで秘め隠してきた己の過去を始める藤兵衛。それは自分と自分の兄にまつわる罪の記憶の物語…

 というわけで内容自体は原作にほぼ忠実なのですが、まずおちかをはじめとするキャストの時点で実にしっくりと原作の空気にはまっており、まずその時点で合格点を差し上げたい気分となります。

 おちかを演じる波瑠は、恥ずかしながら初めて拝見する方なのですが、おちかの、というより宮部時代劇のヒロインのキャラクターを見事に体現しているという印象。
 すなわち、美しく清楚で、しかし決してそれだけではなく、内に秘めた強さ――自分の中の弱さと社会の理不尽に向き合い戦おうとする想い――を感じさせる姿はまさにはまり役と言うほかありません。

 しかし今回、それ以上に感心させられたのは、藤兵衛とその兄のキャストの使い方であります。
 年の離れた、しかしよく似た兄弟という設定のこの二人。少年期の藤兵衛と青年期の兄、青年期の藤兵衛と壮年期の兄、そして壮年期(現在)の藤兵衛――それぞれすれ違って登場する二人を、青年期と壮年期、それぞれで同じキャストが演じるのが実に面白い。
 血の繋がりはありながらも、心は完全に離れてしまった二人。そんな二人がそれぞれ抱えた罪悪感の「顔」を、このドラマ版は、同じキャストを使うことにより、実に印象的に、そして何よりも恐ろしく描き出します。

 正直に申し上げて、藤兵衛の兄が×××するシーンなど、もうやめて! と言いたくなるほどだったのですが(この直後、×××した兄の姿と、頭を垂れた今の藤兵衛の姿が重なる演出もうまい)、この兄弟が見ていたものは果たしてどちらだったのか、という疑問を敢えてこちらの頭に浮かばせるのも心憎いと言えましょう。


 正直なところ、特撮を用いたシーンがそれ以外のドラマパートと浮いている印象は否めませんし(そこは敢えてやっているという可能性もありますが)、「江戸版ウルトラQ」を謳いつつ、タイトルバックの演出がそのままというのもどうかとは思わなくもありません。
 しかし仮にその点を差し引いたとしても、この先の期待が非常に高まる第1回であることは間違いありません。
(ビジュアルだけ見るとどう見ても悪役の伊兵衛(佐野史郎)と口入れ屋の灯庵(麿赤兒)の二人も実にいい)


 そしてラストには、原作ファンでは「ヒッ」となること請け合いの人物も登場。原作でも最も恐ろしかった第2話がどのように描かれるのか、期待を大きく持ちすぎるのは禁物と思いつつも、やはり楽しみなのであります。



関連サイト
 公式サイト

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