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2014.08.15

『向ヒ兎堂日記』第4巻 交わり始めた二つの物語

 国が怪異やそれを記した書物を取り締まる違式怪異条例が施行された明治時代を舞台に、禁書である怪異にまつわる書籍ばかりを集めた貸本屋・向ヒ兎堂とそこに集う人と妖怪を描く『向ヒ兎堂日記』の新刊が発売されました。宿敵(?)ともいえる違式怪異取締局が大きく揺れ動く中、兎堂は…

 明治時代に至り、廃止された陰陽寮の流れを汲む違式怪異取締局。明治の世に生きる妖怪たちを捕らえ、封印していく彼らの中にも二つの派閥がありました。
 クーデターによって主権を握った副長派に対し、これまで何かと兎堂と関わりのあった
局員・都筑たちは半ば追放状態に…

 と、いきなりシリアスな展開となった本作ですが、兎堂の方は相変わらずの日常。
 店に持ち込まれた鈴姫の鈴を元の場所に返すために奔走したり、山からやって来た河童のかつての友達を一緒に探したり…それなりに深刻ではあるものの、どこか暢気な兎堂の日常は相変わらずであります。
(それでいて河童のエピソードでは、ある出生の秘密を背負って生まれ、子供の頃は鬼に育てられていたという主人公・伊織の屈託を絡めてくるのが実にうまいのですが)

 しかしもちろん(?)、それだけで済むはずがありません。都築の部下で、兎堂に入り浸るようになった青年・仙石は兎堂で決定的な瞬間を目撃し、そして河童を連れていた伊織の前に現れたのは、副長派の式神使い…

 本作においては、違式怪異条例という存在を中心において、兎堂と妖怪たちの物語と、違式怪異取締局や陰陽道にまつわる物語と、二つの物語の流れが存在していたといえます。
 これまで時にすれ違い、時に並行して走ってきた物語が、いよいよ交わるかもしれない…それも伊織を軸に、全く予想もしていなかったような形で。

 失礼ながら、物語が始まった際には、このような展開を見せるとは思わず、人間と妖怪の人情話(?)が静かに描かれていくものとばかり思っていた本作。
 あたかもらせん階段を上っていくかのように、物語世界が少しずつ深まり、これまで隠れていたものが見えてくるのは、なかなかにゾクゾクさせられるものがあります。

 そしてまた、その先に見える景色が、優しく暖かいものであることを願っているところなのです。


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