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2014.08.16

『ねこねこ日本史』 擬「猫」化がえぐり出す人物史?

 動物ネタを中心に活動し、最近は私も毎週楽しみにしている「猫ピッチャー」ブレイク中のそにしけんじが、webコミック誌「ねこきゅん!!」に連載していた作品が単行本化されました。簡単に言えば、歴史上の有名人たち(以外の人たちも)を猫にしてしまったという、擬「猫」化漫画であります。

 ――と、いきなり説明が終わってしまいましたが、本作は日本史を古代から幕末まで12人の偉人…いや12匹の偉猫(?)を中心に描いた作品。

 その顔ぶれは、卑弥呼、聖徳太子、聖武天皇、藤原道長、源頼朝、足利尊氏、武田信玄、織田信長、徳川家康、徳川綱吉、大石内蔵助、坂本竜馬。
 戦国時代に偏りすぎとか、元禄時代に2人とかという点は気になりますが、特に前半についてはまず納得のメンバーでありましょう。

 そして内容の方はといえば…これはもう、そにしけんじお得意のゆるさと猫の可愛らしさに充ち満ちているのですが、そこで繰り広げられるのは、もちろん史実を徹底的にパロディにした世界であります。

 卑弥呼の鬼道がねこじゃらしだったり、生類憐れみの令で綱吉が犬を飼って大変なことになったり、アメショのペリーが黒船で来航したり…
 猫のビジュアルの可愛らしさと、歴史上の人物の振るまいが相まって、何ともユルくも楽しいもう一つの日本史が、ここにはあります。

 しかし、ギャグの楽しさ、猫の可愛らしさだけではありません。時折驚かされるのは、作中の人物描写の意外な鋭さであります。
 本作においては、毎回のタイトル(人物名)の下に主な登場人物(猫物)が三匹ほど描かれているのですが、実はその説明がなかなかくせもの。

 聖武天皇は「遷都ぐせがある」
 源義経は「戦は天才的だが、おつむが…」
 そして足利尊氏は「敵味方の区別がつかない」
 一見、身も蓋もない一刀両断ぶりですが、これが史実に照らしてみるとなかなかに的を射たものであることに気づきます。

 特に尊氏など、あの南北朝の争乱の中で立ち位置と戦う相手をコロコロ変えていく様は、なるほど敵味方の区別がつかず、とにかく自分の周囲の動くものに飛びかかる猫のよう。
 これが実際に絵がついて四コマ漫画になってみると、もちろんまた別の面白さがあるのですが、私としてはこの尊氏像を見ただけで、本作を手に取った甲斐があった…というのはさすがに言い過ぎかもしれませんが。


 もちろん基本はギャグ漫画ではありますが、しかしその陰にあるのは、優れた観察眼。
 猫たちの可愛らしさに目を細めつつ、パロディの視点から切り込んだ日本史の姿にハッとさせられる、そんな一冊であります。

 ちなみに作者には、宮本武蔵が五輪書の印税でハワイに移住してゴロゴロする(だけ)という『トロピカル侍』もあり、こちらはある意味本作以上に元ネタと関係ない世界に突入しているのですが、妙にクセになる作品であります。


『ねこねこ日本史』(そにしけんじ実業之日本社) Amazon
ねこねこ日本史 (コンペイトウ書房)

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