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2014.09.08

『信長の忍び外伝 尾張統一記』第1巻 内憂外患、若き日の信長

 いまや戦国四コマ屈指の描き手となった重野なおきの、新たな戦国四コマが単行本化されました。それが『尾張統一記』…サブタイトルにあるとおり本作は『信長の忍び』の外伝、うつけと呼ばれた若き日の織田信長が、尾張を統一するまでを描く(であろう)作品であります。

 本作の物語が開始されるのは、信長が13歳の時点――いわゆるうつけ者として大暴れしていた時代からであります。

 当時の信長の父・織田信秀の置かれた状況については、歴史に詳しい方であればよくご存じかと思いますが、簡単に言えば内憂外患。
 内に(上に)尾張守護代の清洲織田家と同輩の三奉行という油断のならぬ相手を抱え、外からは今川家、斎藤家という大敵が虎視眈々と狙い…尾張一国が統一されるどころか、いつ滅ぼされてもおかしくない状況であります。

 そんな複雑な情勢の中、うつけ者であった信長が戦国大名として、人間として成長し、次第に頭角を現していく様が、本作では描かれることとなります。

 思えば、歴史もので信長が描かれるのは、圧倒的に桶狭間の戦以降が多い、と申せましょう。
 実際、本作の正伝である『信長の忍び』もほぼこの時点から始まる物語でありますが、やはり一世の風雲児のデビュー戦として、圧倒的に不利な状況からの桶狭間での逆転勝利は、見事にはまっているということでしょう。

 しかし、それ以前の信長の戦いも、それに負けずにドラマチックであることは間違いありません。
 上記のような状況から、帰蝶との出会い(はフィクションが入っていると思いますが)、父との別れ、後々まで彼を支える家臣たちの登場等々…

 「信長公記」などの史料を踏まえつつも、そこにきっちりと四コマのオチとしてのギャグを交えていく作者の手法は本作も健在、ニコニコゲラゲラしながらも、いつしか信長の活躍に引き込まれていくという、四コマ漫画としても、歴史漫画としても一級の作品であります。
(既に俗説とされている狙撃手交代の三段撃ちではなく、鉄砲交換撃ちを、典拠を明示しつつ使ってみせるのには痺れます)


 そんな本作の第1巻の時点で特に印象に残ったのは、帰蝶と信秀、信長にとって最も近しい二人の存在でしょうか。

 本編の方でも天然ながら時に鋭くそして暖かいキャラクターを発揮している帰蝶ですが、本作においても出会ったばかりの信長を包み支える魅力的な女性として描かれているのが印象に残ります。

 そしてこの第1巻のドラマを攫っていった感があるのが信秀であります。
 時に信長のうつけぶりに頭を痛め、時に信長に戦国の先達として厳しい指導を行いつつも(そして困った好色オヤジとして描かれつつも)、父として信長を見守ってきた信秀。
 そんな彼の想いが一気に爆発する場面は、本書でも随一の感動シーン、泣かせどころ。いやはや、笑わせてもらうつもりが泣かされるとは…これは嬉しい裏切りであります。


 この信秀に代表されるように、本編に登場する前に世を、表舞台を去った人物は少なくありません。本作では、そんな人物にも注目してこの先も展開していくのでしょう。

 桶狭間の戦は、信長27歳の頃、まだこの第1巻のラストの時点からは10年以上先となります。
 そこに至るまでに何が描かれるのか…家督争いでの大波乱の予感も描かれ、この先も本編ともども、どのように歴史を料理してみせるのか、大いに気になる作品であります。


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