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2014.09.22

『メイザース ソロモンの魔術師と明治の文豪』第1巻 近代合理精神と古怪な魔術と

 倫敦で孤独な日々を送る夏目漱石が出会った奇妙な男・マグレガー・メイザース。一見奇術師にしか見えない彼こそは、19世紀最高の魔術師だった。仲間であるクロウリー、ウェストコットとともに謎めいた動きを見せるメイザースに引きずられるように、漱石は奇怪な魔術の世界に巻き込まれていく…

 その道がお好きな方であれば、タイトルを聞いた途端に「おおっ」と思われたのではないでしょうか。
 『メイザース ソロモンの魔術師と明治の文豪』…メイザースで魔術師とくれば、言うまでもなく近代西洋魔術の確立者の一人であるマグレガー・メイザース。そして彼と接点があった(かもしれない)明治の文豪とくれば…そう、夏目漱石であります。

 1900年から数年間漱石が倫敦に留学していたこと、そして彼がその期間に神経衰弱に悩まされたことは、よく知られた事実でありましょう。
 フィクションの世界でも、この期間を題材とした作品はいくつかありますが(その代表は、やはり山田風太郎のあの作品でしょうか)、まさかここでメイザースと絡めてくるとは…と、コロンブスの卵的着眼点に驚かされた次第です。

 そんな本作のストーリーは、倫敦でメイザース、ウェストコット(!)、クロウリー(!!)と出会った漱石が、彼らと謎の集団「黄金の夜明け団」が繰り広げる魔術戦に巻き込まれていくというもの。
 「黄金の夜明け団」自体は、作中でも語られているように、メイザース自身が設立した魔術結社ではありますが、物語の舞台となる1900年の時点は、内紛を起こして分裂していた時期であります。

 なるほど、この時点でメイザースに対抗できる存在といえば、彼自身が設立し、追放される形となった結社がある意味適任でありましょう(悪役にされやすいクロウリーもこの時点ではメイザース側だったはずであります)。
 そしてメイザースにとっては宿敵・ライバルに当たるのがかの神秘主義詩人たるW・B・イェイツであり、アイルランドの古き神々の復活のために暗躍している…とくれば、これはもう史実(魔術業界的な)がどうであったかはともかく、諸手を挙げて歓迎するほかありません。


 正直なところ、この第1巻の時点ではオカルト的なガジェットや魔術戦の描写は、設定のユニークさに比べると…という印象ではあるのですが(むしろメイザースが食っていくために見せる魔術描写のとぼけっぷりが楽しい)、面白くなる要素は無数にあると申せましょう。
 何よりも本作における語り手(本作は、1906年の日本から倫敦時代を回想するというスタイルで展開)たる漱石――近代合理精神の象徴たる彼が、古怪な魔術飛び交う本作の物語においてどのような位置を占めるのか、どのような意味を持つのか、その点が大いに気にかかるのです。


 ちなみに作者の星野泰視は、『哲也 雀聖と呼ばれた男』のようにギャンブル漫画の印象が強いため、本作は少々意外に感じますが、以前にも魔術ものの『弑逆契約者ファウスツ』を連載している作家。
 その点からも、まずは期待してよいのではないかと思う次第です。


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コメント

どうでもいい些細なことですが、イエイツはメイザースの弟子です。一時期までイエイツはメイザースを心の師として尊敬しておりました。しかし詩人として花開き、実践魔術の世界から遠ざかるにつれてメイザースとは縁遠くなったのです。メイザースの敵ならばウエストコット、ライバルというか年下の邪魔者としてはクロウリーが存在します。蛇足ながらイエイツは自伝小説(「まだらの鳥」と記憶していますが間違ってるかも)でメイザースの思い出を苦く語ってます。晩年のメイザースは5シリングで売ってるおまじない本で生計を立てていました。また、メイザースはアルコール中毒を患っていたことが有名です。

投稿: 朝松健 | 2014.09.22 16:07

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