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2014.09.13

『明治瓦斯燈妖夢抄 あかねや八雲』第1巻 怪異を蒐める男「八雲」がゆく

 新米巡査の一宮は、遊郭で「拝み屋」と称して怪しげな商売を営む不良外人の監視を命じられる。小泉八雲と名乗るその青年に接近するうち、相手のペースに巻き込まれ、共に行動することになった一宮。二人の前に現れるのは、超自然の怪異の数々――怪異を蒐集するという八雲の真意とは?

 マッグガーデンの「月刊コミックブレイド」誌でただいまプッシュ中の森野きこりによる連作怪異譚『明治瓦斯燈妖夢抄 あかねや八雲』の第1巻が発売されました。
 タイトルの時点でこれは面白そうだわいと期待していたのですが、なるほど、これはなかなか曲者の、ユニークな作品であります。

 物語の舞台は明治15年――故あって家督を弟に譲り、自分は家を出て東京で巡査となった一宮隆生は、遊郭で詐欺紛いの「拝み屋」として稼ぐ異国の青年と出会います。

 常に飄々と、人を食ったような言動のこの青年が名乗った名前は八雲――小泉八雲。
 八雲のペースに巻き込まれまいとした一宮は、人の精気を狙う女郎の幽霊に襲われ、危ういところを八雲に救われることになります。

 実は幼い頃から他人には見えないモノが「視」える一宮。そしてそんなモノにまつわる物語を蒐集することを目的としている八雲。
 八雲に煙に巻かれるうちに、コンビを組むような形となってしまった一宮は、八雲とともに様々な怪異に出くわすことに…


 という基本設定の本作ですが、もちろんその最大の特徴は、ゴーストハンター役を務めるのが「小泉八雲」であることでしょう。

 実のところ、八雲が実際に怪異に出くわす(そしてその経験が後に『怪談』等にまとめられる)という趣向は、それほど珍しいわけではありません。これまでこのブログでも四五作は紹介しているのではないかと思いますが、しかしその中でも本作がユニークであるのは、「八雲」がいわゆる不良外国人である点でしょうか。

 八雲といえば、日本文化への愛に満ちた温厚な知識人…というイメージがありますが、本作においては遊郭に流連けては、綺麗どころと酒を飲む、拝み屋と称して人から金を掠めとると、まことに油断ならぬ人物。
 一宮ならずとも身構えてしまうような相手ですが、しかし彼が怪異に対してだけは、一種真摯な態度を取るというのが実に面白いのです。


 しかし何よりも面白いのは――既に八雲の経歴に詳しい方はご存じかと思いますが――史実では八雲はまだこの物語の時点では来日していないことになっていることでしょう。
 果たして彼は密かに来日していたのか、それとも――そんなこちらの胸中を察したように、この巻のラストには八雲に意味深な言葉を投げかける人物が登場し、気を持たせてくれます。

 全てのエピソードが後の八雲の怪談に結びつくわけではないのはちょっと残念ですが(その処理もまたある意味ずるい)、しかしこの八雲の設定だけでも大いにそそられる…そんな、先の展開が楽しみになる作品であります。


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