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2014.09.10

『十 忍法魔界転生』第5巻 本戦開始直前、ゲームのルール定まる

 気がつけばついに第5巻となった「十 忍法魔界転生」。転生衆が集結し、主人公が登場し、ついに両者が出会い――しかしすぐには始まらない真の戦い。本戦の前に行われるべきは、ゲームのルールの設定であります。

 地底の魔窟から逃れた三人娘を追う転生衆。彼女らを逃がすべく捨て石となった三人の大達人は次々と命を落とし、かろうじて木村助九郎のみが、孫娘たちを連れ、柳生庄の十兵衛のもとに逃げ込んだ…というのが前巻のあらすじ。

 この巻では、柳生館に迫る魔人たちに対し、ただ一人十兵衛が立ちふさがる場面から始まるのですが…しかしいくらなんでもこれは無謀だ。
 この時点で十兵衛が敵の正体に半信半疑とはいえ、その放つ剣気・殺気・妖気は尋常ではありません。事実、十兵衛が冷や汗まみれとなるという、信じられないような姿を、我々は見ることとなります。
 が、そのような状態であっても、なおも臨戦態勢を取るのは、さすがは十兵衛というべきでしょうが――

 この対決は諸事情により水入りとなりますが、しかし両者がこれで収まるはずはありません。
 十兵衛側は、助九郎たちの仇である転生衆を討ち、そして紀州藩を救うため…
 そして転生衆側は、目撃者たちの口を封じ、そして最後の転生衆たる十兵衛を仲間に加えるため…

 単純に勢力・戦力だけでいえば、どう考えても転生衆が――いや紀州藩が有利であります。しかしそこにそれぞれの思惑を絡め、そうそう簡単に勝負をつけさせない状況を作り出すのは、原作者の得意とするところ。
 ここから始まるのは一種の神経戦、頭脳戦でありますが、これが武器を取っての戦いに負けず劣らず面白く、盛り上がるのであります。

 特に上に挙げた思惑のうち、最後のそれが実にうまい。これによって――そして彼らの武芸者としての本能によって――十兵衛と転生衆の一騎打ちというスタイルが、無理なく成立することになるのですから。

 そしてほとんど会話のみのこのルールの設定のやりとりが、盛り上がるのは、原作の見事さ――だけではなく、それを様々なビジュアルで盛り上げるせがわまさきの筆によるところが大きいことは言うまでもありますまい。

 特に今回は、十兵衛が単身頼宣らのもとに推参した場面に代表されるように、人物を影絵のようにシルエットのみで描く手法が抜群にいい。
 作者はCGによる作画を得意とするところですが、そこに影絵のようなシンプルな描写を入り混ぜるというのもまた、取り合わせの妙というべきでしょう。


 そしてついにゲームのルールは定まり、転生衆側には根来衆、十兵衛側には柳生十人衆、そしてある意味ワイルドカードともいうべき少年・関口弥太郎も加わって、参加者も勢ぞろいしました。
 もちろんゲームといってもかかっているのは己の命。そしてそのゲームの一番手は、というところで次の巻に続きます。

 …にしても、ようやく戦いが始まるまでで5巻というのは、原作の分量からしてそうなのですがやはり少々驚かされます。甲賀と伊賀の忍法合戦なら始まって終わるくらいの分量なのですから――


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