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2014.09.28

『おそろし 三島屋変調百物語』 最終夜「家鳴り」

 いよいよTVドラマ版『おそろし』も最終回。かつて凶宅にとりこまれたおたかが、前回のラストで「蔵が開いた」と呟いたとおり、あの凶宅の呪われた蔵で、おちかは最後の物語と相対することとなります。その果てに彼女を待っているのは――

 突然江戸にやってきたおちかの兄・喜一。これまで幾度か彼の前に現れていた松太郎の亡霊が、「行き場所がわかった」と言うのを聞き、おちかの元に松太郎が現れたのではないかと気にしてきたのです。
 それと時同じくして現れたのは、おたかを引き取った商家の若旦那・清太郎。おたかは蔵が開いたほかにも、「お屋敷に松太郎という客が来た」と語っていたのでありました。

 意外な形で繋がった二つの怪事。かくておちかはおたかの座敷牢に向かい、兄たちの眼前で姿を消してしまうおちかとおたか。
 そしてあの屋敷に足を踏み入れるおちかは、子供に戻ったおたか、そして松太郎を追いかけてあの蔵に踏み込もうとするのですが――

 そこで彼女を止めたのは、「曼珠沙華」の物語を語った松田屋。そして「魔鏡」の物語に現れたお彩と市太郎が、宗助とお吉が、そして「凶宅」の清六や辰二郎一家までもが――これまでおちかが聴いた百物語に関わった死者たちが、皆姿を現したのであります。

 物語を聞くということは、その物語を、そこに登場した人々のことを記憶に留めること。奇怪な事件の末に命を落とした人々は、おちかに語られることによって、おちかの中に甦り、そして一つの物語として繋がったのであります。

 本作は、おちかが怪異譚を聴くことにより、一種のカウンセリング的な形で癒されていく物語であります。
 しかしそれと同時に、物語られること、記憶されること、忘れられないことで救われるものがあるということを、本作は同時に示します。
 それこそが「語り」の持つ力なのでありましょう。

 もちろんそれがポジティブな効果のみを持つとは限りません。松太郎が凶宅に招かれたように、語られた怪異と怪異が結びつくこともまた、あるのかもしれません。
 そうだとしても…人と人が繋がることは、時として理不尽な悪意を超える力を生むのであります。
 それだからこそ、時に揺らぎながらも、人に支えられながらも、おちかは決然とした瞳で怪異の源と対峙し、その物語を聴くと言い放つことができたのでありましょう。

 もちろんこれは一歩間違えれば説教臭い奇跡の連続になりかねませんが、それを感じさせなかったのは、原作の完成度の高さと――そして何よりも、本作の物語に登場する人々を演じた面々の力に依るところも大きいと申せましょう。

 特に、第一夜の感想でも申し上げたとおり、おちかを演じた波瑠の見事なヒロインぶりは言うまでもなく、彼女にとっての原罪であり、そして救いとなった松太郎を演じた満島真之介は、さすがとしか言いようのない存在感でありました。
 その他、脇役一人一人に至るまで――本作の出演陣は、本作をもう一つの『おそろし』として成立させていたと心から思います。


 そして…あのメフィストフェレスめいた謎の男が告げたように、おちかの物語は、彼女が聴くべき物語はまだまだ続きます。
 そうであるならば、ドラマとしての『三島屋変調百物語』もまた続くべきでしょう。何よりも、揺れながらも決然とした瞳で百物語と――人の隠れた記憶と対峙するおちかの姿をまだ見ていたいと、そう感じるのです。



関連サイト
 公式サイト

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