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2014.10.17

『応天の門』第2巻 若き道真が背負った陰

 引きこもりの文章生・菅原道真と、色男にして高級武官・在原業平がコンビを組んで平安京の怪事件に挑む『応天の門』第2巻であります。この巻においては業平と、藤原家の姫君・高子の過去が、そして道真と菅原家が背負った陰の存在が描かれることに……

 傲岸不遜で世間知らずの文章生(歴史・漢文学生)の道真と、世知に長けた左近衛権少将(内裏の守備や皇族の警護担当の武官)である業平――本来であれば交わるはずがないものが、女官の行方不明事件をきっかけに知り合った二人。
 道真の頭脳の冴えを知った業平は、以後何かと道真を引っ張り出して、彼の力を借りようとするのですが、道真の方は迷惑がるばかり……となかなか息が合わないのも面白い凸凹コンビであります。

 そんなおかしなバディの活躍を描く本作ですが、この巻に収録されているのは三つのエピソードであります。
 触れたものの前に怨霊や物の怪が現れるという、遣唐使船が持ち帰った書の謎「怨霊出ずる書の事」
 かつて業平と関係があったという摂政藤原良房の姪・高子の屋敷に現れたという物の怪の真相を道真が探る「藤原高子屋敷に怪の現れたる事」
 道真の友が買った唐物の鏡の売り手が突如狂気した事件と道真の過去が交錯する「鏡売るものぐるいの事」

 いずれも人外の化生が関わっているとしか思えぬ事件ですが、その背後に隠れているのは確かな人の意思。その意思の存在を解き明かした上で(全てのエピソードがそうではないのですが)、真相をうまく隠し、それを引き起こした一因をも解決してみせるというのがまた面白いところであります。


 ……が、正直に申し上げると、第1巻ほどは盛り上がらなかった印象がこの巻にはあります。
 理由の一つは、今回は道真がメインで、業平はさほど物語に絡んでこない点。話の流れ的にやむを得ない部分はあるのですが、やはり意外な二人の取り合わせが楽しいだけに、バディもの要素が薄いのは残念なところです。

 もう一つは、道真が挑む謎の魅力と言いましょうか……道真が「この世には不思議なことなど何もない」というスタンスのためか、全ての謎が合理的に解かれる、それは良いのですが、謎のスケールが今ひとつ小さく、あっさり読めてしまうのもまた残念。
 そういう作品ではない、と言えばそれまでかもしれませんが、やはり魅力的なキャラは魅力的な謎に挑んで欲しいのであります。


 と言いつつも、この巻で道真がクローズアップされているのにも理由があることは理解できます。
 それは彼の、彼の家の過去にまつわる、ある陰の存在。まだ年若く、業平のようなアレコレがなさそうな道真が心に背負ったある人物の存在が、この巻では徐々に描かれていくこととなります。

 そしてこの巻のラストで道真が辿り着いたある結論――それがこの先どう物語に絡んでいくかはわかりませんが、間違いなく、この物語の方向性を、つまりは道真の運命を大きく左右するものでありましょう。
 そしてそこに業平も大きく絡んでくることを、期待しているところであります。


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