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2014.10.02

『妾屋昼兵衛女帳面 7 色里攻防』 待ち受ける最強の刺客、負けられぬ決闘

 妾屋を掌中に収めんと暴走する吉原惣名主・西田屋が送り込んだ女によって火をつけられた山城屋。さらに刺客と化した忘八が襲いかかり、奉行所までも敵に回る。八重の機転で林出羽守を後ろ盾につけ、逆襲に転じた昼兵衛。しかし卑劣な西田屋は、昼兵衛と新左衛門に対し、最強の刺客を用意していた…

 好調の『妾屋昼兵衛女帳面』シリーズも第7弾、今回は吉原対決編のいわば後編とも言うべき内容であります。
 とある商人の横暴を懲らしめたことがきっかけで逆恨みされた山城屋昼兵衛。この商人が奉行所に手を回し、さらにそこに吉原の惣名主・西田屋が絡んできたことで、事態は決定的に悪化することになります。
 近年の吉原の凋落ぶりを岡場所や妾屋のせいと逆恨みした西田屋は、妾屋を我が物にせんと、暗躍を開始することになります。

 そして本作においては、手段を選ばなくなった西田屋の手によって山城屋が焼失するという非常事態に。さらに被害者であるはずなのに奉行所に連行され、あわや取り調べと称した拷問にかけられかねぬことに…

 これまで旗本や大名はおろか、幕閣を向こうに回して一歩も退かずに戦ってきた昼兵衛と山城屋チームですが、今回の敵・吉原は、命知らずの忘八たちという暴力と、金の力で抱き込んだ奉行所という権力、いわば裏と表から攻めてくるのが恐ろしい。
 もちろん単なる暴力であれば、新左衛門と将左という最強の剣士二人がいるのですが、しかし奉行所がその気になれば、彼らを不逞の浪人として捕らえ、密殺することも不可能ではないのです。

 しかし、それで昼兵衛たちが引き下がるわけはありません。暴力には暴力を、権力には権力を――これまで築いてきた人と人との繋がり、コネと貸しをフル活用して反撃に転じる姿は、いつもながらに痛快の一言であります。
 が…ついに吉原に乗り込んだ昼兵衛と新左衛門を待っていたのは、なおも卑劣な手を用いる西田屋が用意したまさしく最強の刺客なのですが――クライマックスで描かれる、新左衛門とこの刺客の決闘シーンの盛り上がりがまた尋常ではない。

 新左衛門も、相手も、ともに賭けているものは己の命のみではありません。彼が背負っているのは、それと同じくらいに大事な人の命であり、そのために彼らはともに生きて帰らなければならないのであります。
 どちらも決して負けられない戦いを止められることができるのはただ一人昼兵衛のみなのですが…

 そしてそれと並行して盛り上がるのは、昼兵衛と西田屋の対決であります。

 共に女性を飯の種にし、それ故に同類に見られることもありながらも、しかし決して相容れない両者。妾屋が女性たちの意思を尊重しているとすれば、吉原は女性たちを道具として利用する――
 いささか図式的であり、そして妾屋については理想主義的かもしれません。それでも、それでもなお、己の稼業に対する誇りと良心を捨てない昼兵衛の姿はやはり痛快であり、彼に勝って欲しいと心から応援したくなるのであります。

 そしてその気持ちが裏切られることはないわけですが――


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