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2014.11.13

『一鬼夜行』第1巻 イケメン喜蔵登場!? 良い意味で漫画的な一作

 原作小説は第6作『鬼が笑う』(ちなみに実は解説は私が担当させていただいております)で第一部が完結した『一鬼夜行』ですが、同時に森川侑による漫画版第1巻が発売されました。

 この漫画版は、現在『月刊ビックガンガン』誌にて連載中の、シリーズ第1作をベースとした作品であります。。
 妖怪もビビる閻魔顔の古道具屋の若主人・喜蔵と、彼の前に夜の空を行く百鬼夜行から地上に転がり落ちてきた自称大妖怪の小春。そんなおかしな凸凹コンビが、様々な妖がらみの事件に巻き込まれ、奔走する……

 という『一鬼夜行』の基本フォーマットについては今更言うまでもありませんが、第1作目は、それが一種の連作短編的なスタイルで構成されているのが、今見てみれば特徴でありましょうか。
 この漫画版第1巻には、喜蔵と小春の出会い、喜蔵の(元)親友である彦次と彼に憑いた不思議な妖の交流、喜蔵行きつけの牛鍋屋の看板娘・深雪の友人の身に起きた怪事……と、全部で3つのエピソードが収録されております。

 この漫画版の内容的にはほぼ原作どおりですが、唯一大きく異なる点は、彦次のエピソードと深雪のそれが、原作と順番が前後しているのですが、第1話に彦次が登場していることからのアレンジでありましょうか。これはこれで自然に感じます。

 しかし既に知っている物語であっても、原作読者としても楽しめるのは、そのエピソードに差し挟まれる喜蔵と小春、あるいは他のキャラクターたちのやりとりが、良い意味でマンガチックに描かれている点でしょう。
 元々キャラが立った登場人物たち揃いの原作ではありますが、時にリアルに、時にディフォルメれた絵柄を使い分けてその姿を描けるのは漫画というメディアならでは。
 特に小春と喜蔵のツッコミ合戦は原作でももちろん大きな魅力ですが、小春のナマイキ可愛らしさと喜蔵の容赦ない仏頂面は、実に漫画に良くマッチしていると感じます。

 と、活字の漫画化といえば気になるのはその絵柄、なかんずくキャラクターデザインでありますが、本作はその点でもなかなかに魅力的であります。
 喜蔵が月代を剃っておらず、それ故かなかなかのイケメンに――「目つきが悪いために周囲に誤解されがち」系キャラに見えてしまうのは(いや、冷静に考えれば間違いでもないのですが)違和感皆無とは言えませんが、これはこれで読者層を考えればアリでしょう。

 その他のキャラクターも、漫画的なアレンジはされているものの、十分以上の出来でしょう。小春の可愛らしさと、時に見せる人外のものとしての「顔」のギャップもいいのですが、特に印象に残るのは弥々子河童。
 河童としてのアイコンと、女性としての艶やかさが同居したデザインは、なるほどこの線があったかと感心いたしました。


 というわけで、私のようなうるさい読者も納得の出来の漫画版、いささか気が早いのですが、ぜひ第1作以降も続けて漫画化していただきたいものです。
 この先もまだまだ、魅力的なキャラクターが毎回のように登場するのですから……


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