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2014.11.18

『猫絵十兵衛御伽草紙』第11巻 ファンタスティックで地に足のついた人情・猫情

 不思議な力を持つ猫絵を描く十兵衛と、元猫仙人のニタのおかしなコンビを通じて描くちょっと不思議な江戸人情譚『猫絵十兵衛御伽草紙』に、早くも最新巻、第11巻が登場であります。これまでに比べると、前巻からわずか2ヶ月での登場ですが、ファンとしてはもちろん大歓迎であります。

 さて、この巻には「猫絵屋の一日」「百代猫三番勝負」「本草猫」「不知森の猫」「花火猫」「月見猫」「火事場猫」と全7話が収録されておりますが、十兵衛の子供時代を描くラストを除けば、基本的に通常営業。
 十兵衛と、ニタと、江戸の人々と猫(そしてたまに妖)が織りなす物語を、静かに、しかし味わい深く描く点は、もちろん良い意味で全く変わりません。

 そんな中でこの巻の特徴を敢えて挙げるとすれば、冒頭を除き、ほとんどのエピソードで、作中に超自然的な要素が登場することでしょうか。

 本作はそれぞれ不思議な力を持つ十兵衛とニタのコンビを主人公とするものの、必ずしも展開される物語は、猫又などの妖が登場するものではありません。
 中にはかなりの割合で、十兵衛とニタは狂言回し的立ち位置となる純粋人情話(という表現が正しいのかはわかりませんが…)が含まれております。

 それはそれでもちろん魅力的であり、特に「普通の」猫の可愛らしさがより強調されている感すらあるのですが、まあこのようなブログとしては、大変申し訳ないことですが、やはり超自然的な要素に目が行ってしまうのであります。

 そんな読者にとってはこの巻は垂涎の一冊。
 表紙も飾っている雌猫又・百代が襲来、ニタを賭けて再び十兵衛に勝負を挑む「百代猫三番勝負」、人の手が入り始めた森で静かに暮らしてきた猫と老いた犬のために十兵衛たちが一肌脱ぐ「不知森の猫」、月見団子を作りたいという不思議な双子のために、お馴染みの好漢・西浦さんが奔走する「月見猫」など――どのエピソードも、ファンタスティックな、それでいて地に足のついた人情・猫情を見せてくれるのがたまりません。

 しかしこの巻で群を抜くのは、間違いなく「花火猫」でありましょう。

 お盆の江戸を舞台に、女手一つで飲み屋を切り盛りする女性のもとに帰ってきた猫を中心に描かれる本作。亡くなったものが愛しい者のもとに帰ってくるというテーマは、これはファンタスティックな人情話においては定番中の定番ではありますが――
 詳細は語りませんが、本作はそこに一種のトリックとも言うべき捻りを加えることにより、切なくも温かい余韻をいや増すことに成功しているのが何とも心憎い。

 なるほど、このような不思議の使い方もあるのか……と大いに感心した次第です。


 定番のようでいて、そこに安住せずまだまだ新しい金脈を掘り起こしていく……少々大袈裟かもしれませんが、そんな印象を受けた巻であります。


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