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2014.11.05

『あやかし秘帖千槍組 2 妖貸し狐狸合戦』 絆を守る四つの物語

 越前で妖怪と結んだ悪人を退治した際、子狸が封じられた壷を手に入れたお漣・蘭・お輪・黒丸の千槍組。壷を手に旅立った千槍組の前に、妖怪を悪人に貸し出す「妖貸し」のお紺が操る妖怪たちが立ち塞がる。激闘の末にたどり着いた佐渡で彼女たちを待つものは、狸と狐の熾烈な戦いだった……

 廣済堂モノノケ文庫の最新刊は、友野詳による妖怪版チャーリーズエンジェルともいうべき『あやかし秘帖千槍組』シリーズの第2弾であります。

 人とは不可侵の状態で暮らす妖怪たちを束ねる十大妖の下、人と妖怪の平和のために戦う「妖かし守り」。そのチームの一つが、鞍馬僧正坊の子・千槍白羽丸の指令を受けて活躍する千槍組であります。

 西洋の幽霊船に取り憑かれた(!)妖艶な美女・お漣、雪男の父と雪女の血を引く母の間に生まれた男装の剣士・蘭、糸車の付喪神で火車の赤ん坊を連れた少女・お輪……
 ともう一人、小間使いの半端天狗・黒丸を加えた彼女たち四人は、普段は旅芸人の白羽一座として諸国を巡り、妖怪と人間の諍いに介入して人妖不可侵を守るために戦うのであります。

 そんなシリーズの基本設定は今回も変わることはありませんが、前作は一本の長編スタイルだったのに対し、本作は一つの物語を追いかけつつも、全体としては四つの短編から構成された連作形式となっているのが大きな違いでありましょう。
 いわば前作が拡大スペシャルの第一話だったとすれば、今回はレギュラーシリーズといったところでしょうか。

 そして物語のバリエーションという点からすると、その全四話構成は実にいい方向に作用しております。
 旅の途中で立ち寄った漁村で、子供をさらったという海の神にまつわる意外な真実を描く第一話。
 仲間からはぐれた蘭が、妖貸しに追われる男とむじなの子を守って孤独な戦いを繰り広げる第二話。
 奇怪な竹林に迷い込んだ千槍組の面々が、姿なき敵の攻撃の前に疑心暗鬼に陥っていく第三話。
 ついに佐渡島にたどり着いた千槍組が、謎の壷を巡り、狸たちを滅ぼし人間を支配せんとする妖狐との決戦に臨む第四話。

 謎解きあり、人情あり、能力バトルあり、伝奇あり――それぞれ全く異なった趣の四つのエピソードは、短編でありつつも、その分量を感じさせぬ密度、満足度であります。
(そしてまた、テンポの良い四話構成にしたことで、前作で少々感じたストーリー展開の重たさも解消された印象があります)

 しかし、一本のストーリーとして緩やかに繋がっている点を除いても、本作の四つのエピソードには、共通する部分があるやに感じられます。
 それは「絆」の存在――人と妖の、妖と妖の、親と子の、そして仲間同士の、様々な形の絆のあり方が、四つのエピソードでは描かれているのです。

 「絆」とは、個人と個人を結びつけるもの。たとえその結びつきの理由や程度はそれぞれだとしても、そこで生まれた結びつきの美しさを本作は描き出す――というのはいささか言い過ぎかもしれません。
 しかし人と妖の間に立ち、そしてその両者のために戦う千槍組が今回守るものは、まさにその絆――そしてもちろん、彼女たちも自分たち自身の絆を背負っているのですが――であると、特にラストのエピソードからは強く伝わってくるのです。


 敵側にも相当の大物が現れ、いよいよ作品世界の広がりが感じられる本作。次あたり、相当大がかりな話になるのではないかという予感もありますが、いずれにせよ二作目にして大いに勢いがついてきたことは間違いありません。次回作が楽しみであります。


『あやかし秘帖千槍組 2 妖貸し狐狸合戦』(友野詳 廣済堂モノノケ文庫) Amazon


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