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2014.11.03

『軍師 黒田官兵衛伝』第2巻 運命の変転と、来たるべき未来と

 大河ドラマの方はそろそろ終わりが見えてきましたが、こちらはこれからいよいよ佳境に入るところの戦国4コマ漫画『軍師黒田官兵衛伝』第2巻であります。第1巻ではどっちつかずの主君を説き伏せて織田家の傘下に入ることを承知させた官兵衛ですが、その主君の裏切られ、土牢に幽閉されることに……

 というわけで、この巻の前半で描かれるのは、官兵衛の生涯を語るにあたり欠かすことのできない有岡城での幽閉生活であります。

 信長に背いた荒木村重を説得するために単身、有岡城に赴いたものの、主君である小寺政職によって村重に売り渡される形で捕らえられてしまった官兵衛。
 村重に幾度も返り忠を勧められながらも、これを肯んずることなかった官兵衛は、日も射さぬ狭い土牢の中に永きに渡り幽閉されることとなります。しかも使者として城に入ったまま消息を絶った官兵衛を、信長は裏切ったとみなし、人質である官兵衛の子・松寿丸を殺せと命じることに……

 と、ここで描かれるのはいわゆる官兵衛ものでは必ず語られるエピソードに忠実な内容。その意味では新味はない……といえるのかもしれませんが、これだけ悲壮な内容を、適度なギャグを交えつつ、四コマ漫画として成立させているのは、これは見事というほかありますまい。

 もちろん官兵衛のみならず、残された家族や家臣たちの結束と努力、そしてあくまでも官兵衛を信じる竹中半兵衛らの姿も平行して描かれるのも巧みなところ。
 特に半兵衛に関しては(これは史実なので書いてしまいますが)、官兵衛が救出される前に病没しているのですが、そこで描かれる秀吉との別れの場面が心に残ります。

 第1巻の紹介でも触れたかと思いますが、本作は同じ作者の『信長の忍び』と同じ世界観であり、同じキャラクターデザインで描かれることとなります。
 いわば本作は『信長の忍び』の未来の姿を描いた作品と言えますが、それだけに、同作から登場している半兵衛の退場は、おそらくは初めてであろう秀吉の悲しみの涙とともに、強く印象に残ります。

 印象に残るといえば、官兵衛に対する村重の想い、いや村重が信長を裏切った理由などもなかなか読ませてくれるのですが、この辺りはちょっと(カッコ)イイ話に過ぎると感じられるのは、本作がやはり、官兵衛という主人公を中心とした物語である故でしょうか。
(その意味では、千鳥という主人公と、信長という中心を別々に持った『信長の忍び』とは、やはり大きく異なる印象があります)


 何はともあれ土牢から救出され松寿丸も無事、信長の信用を得て、秀吉に仕えることに――と、大きな運命の変転を迎えた官兵衛。
 本書の後半で描かれるのは、秀吉の軍師として活躍する彼の姿ですが――しかし単純に格好いい姿を描くだけではなく、鳥取城攻略戦(しかし帯で「[鳥取城渇え殺し]完全収録!」と強調されているのはこれはどういうわけか……大河ドラマとの対比でしょうか)では戦の厳しさ、残酷さも同時に描き出すのは、本作の魅力でしょう。

 また、第1巻でも強烈な個性を放っていた宇喜多直家が、ある種の律儀者である官兵衛とは正反対の人物でありつつも、それなりの道理と理想を持った人物として描かれているなど、ディフォルメしながらも陰影に富んだ人物像もまたお見事。

 『信長の忍び』読者にとってはよくご存じのとおり歴史ドラマと四コマギャグを同時にハイレベルで成立させる作者の手腕は、本作においても――上で述べたように、作品の構造から来る違いはあれど――健在であります。


 さて物語は次の巻で運命の天正10年へ。ラストに登場した「あのキャラクター」――『信長の忍び』とはうって変わった、半ば死人と化したような表情には背筋が粟立つばかりのあのキャラクターが引き起こす事件を、本作はどのように描くのか。
 いよいよ正念場であります。


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コメント

「信長の忍び」もそうですが、結構歴史こぼれ話のような話もあるのがこの作品。松寿丸(長政)が実は歴史上に残るほどの○○○だったとは知りませんでした。元祖ジャイアンだったのですなwww

投稿: ジャラル | 2014.11.05 22:02

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