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2014.11.28

『いくさの子 織田三郎信長伝』第6巻 立ちすぎたキャラクターの善し悪し

 少年・青年期の知られざる織田信長の活躍を描く『いくさの子 織田三郎信長伝』の第6巻は、引き続き海洋編とも言うべき内容。仲間たちとともに海に出た信長たちが挑むのは、南蛮からやってきた海賊との伝説の秘石争奪戦という奇想天外な展開であります。

 新たな力として南蛮船と火縄銃を手に入れた信長と腹心の仲間たち。その力を試すために海に出た信長たちは、織田家を今脅かす最大の敵たる今川義元が、持つ者に己の未来を見せるという秘石「光の天」を手に入れようとしていることを知ります。

 ただでさえ強大な力を持つ義元がそのような秘石を手に入れてしまえば、もはや織田に勝ち目はない。秘石を奪取せんとする信長たちですが――秘石を運ぶのは南蛮人の海賊・ジョゼ船長。
 三隻の海賊船からなるジョゼの船団を正面から襲うのは不可能とばかり、堺に停泊したジョゼに接近する信長一行ですが、彼らのとった作戦とはなんと……

 と、今回も破天荒きわまりない展開となる本作。
 以前にも述べたかと思いますが、信長の場合、デビュー戦があまりに印象的すぎて、それより前の行動が――もちろん、尾張のうつけ者としてのそれはありますが――霞んでしまっている印象があります。
 本作はそれをうまく逆手にとって、信長のキャラクターと時代背景を生かしつつも、他ではまず見ることができないような物語を作りだしていると申せましょう。
(何しろこの巻では信長たちが××に……いやはや驚いた)


 そしてそこに、原哲夫流のキャラクター造形と描写が加わるわけで、鬼に金棒――と言いたいところですが、しかし実のところ今回はそれがやりすぎの印象。
 というか、今回の敵役たるジョゼ船長のキャラが異常に立ちすぎて全てをかっさらってしまった感があることで……

 海賊らしい冷酷非常さと、船乗りらしい野放図な陽気さ・明るさを持つジョゼ。基本的に非常にテンションの高いキャラなのですが、その高さが――信長をはじめ、基本的にテンション高めのキャラが多い本作においても――ちょっと群を抜きすぎて、自分が読んでいるのが何なのかわからなくなってしまう……

 というのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、少なくともこの巻においては、信長の物語というよりジョゼの物語を読んでいる気分になったのは確かな印象です。
(この巻においては、信長伝としては重要な二人の新キャラクターが登場するのですが、その二人があまり印象に残らないという……)


 決してつまらないわけではなく、むしろ面白い作品であり、キャラクターが自分の命を持って動きまくっているのはポジティブにとらえるべきかとは思いますが――

 いや、これはもう、どこに物語がたどり着くかわからない、その点を楽しむべきなのかもしれません。少なくともここには、これまで同様、いやそれ以上に斬新な信長の物語があるのですから。


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