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2014.12.23

『大樹 剣豪将軍義輝』第3巻 颯爽いや悽愴の少年期の終わり

 前の巻からかなり間が空いた印象がありますが、宮本昌孝の『剣豪将軍義輝』の漫画化『大樹 剣豪将軍義輝』の待望の続巻です。都を巡る複雑怪奇な政治力学に翻弄されてきた義藤(義輝)が知った、重く悲しい過去の秘密とは――

 大樹(将軍)に就任したものの、その地位は名ばかり、管領・細川晴元と細川氏綱の争いと、それに乗じて勢力を伸ばす三好長慶(そしてその下の松永久秀)に翻弄され、文字通りの都落ちを余儀なくされる義藤と父の義晴。

 そんな中、義晴が何者かに襲撃され、義藤は捕らえられたその下手人と対面するのですが、相手が語り始めたのは、義藤自身の過去とも無縁ではないある真実でありました。
 幼い頃の義藤がなついていた侍女・お玉。どこかに縁付いたと聞かされていた彼女が辿った運命を知った義藤の想いは……


 宮本作品といえば、まず思い浮かぶイメージは「颯爽」の一言なのですが、この巻で描かれる物語は、むしろ「悽愴」と言うに相応しい印象があります。
 あまりに大きな力のうねりに巻き込まれて無惨に散った人々の存在と、そしてそれに自分の父が関わっていたという事実。そして何よりも、それを自分だけが知らなかったという悔恨……

 陰影に富んだ画も相まって、重い印象の残るこの巻のエピソードではありますが、しかしそれが義藤が少年から青年になるための、一つの通過儀礼と言うべきものであることは間違いありますまい。
 そして何よりも、剣豪将軍義輝という光が輝くために、彼が自らが――己が意識していなかったとしても――背負っているもの、自らの周囲にある闇の存在を知るこは、不可欠と言えるでしょう。


 そんなわけでなかなかに読み応えのある巻なのですが、ただ一つ気になってしまうのは、作中の文章量の――文章で示される情報量の多さであります。
 正直に申し上げて非常にややこしい時代背景、そしてそれが物語の展開と密接に関わることを考えれば、ある意味仕方がないことかもしれませんが、漫画というより絵物語的なスタイルにすら感じられるのは、やはりどうかな、とは思います。

 剣戟シーンの迫力や、成長した熊鷹のキャラクターデザインなど、漫画としても魅力的な部分が少なくないだけに、やはり勿体ないと感じる点ではあります。


 と、この巻のラストではついに義藤が義輝に、そして霞新十郎に! というわけで、この先、いよいよ「剣豪」部分がクローズアップされることになるのでしょう。
 より凜々しい姿となった義輝=新十郎の姿に、この先の物語を期待するなというのが無理でありましょう。
 あとは、次の巻が少しでも早く読めることを祈るばかりであります。


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