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2014.12.28

『お伽もよう綾にしき』第4-5巻 二人の想いの先の救い

 室町時代を舞台に、もののけを操り世を乱さんとする怪人と、ヒロイン・鈴音との対決を描く『お伽もよう綾にしき』の後半2巻の紹介であります。初めは単なる御家騒動と思われた一件もスケールアップ、しかし鈴音の側にも頼もしい味方が登場することになります。(以下、多大なネタバレを含みます)

 伊摩の国の守護代が亡くなったことにより起きた御家騒動。偶然、幼い当主を救った鈴音は、「ととさま」こと新九郎が残した笛から現れた「おじゃる様」とともに当主を襲うもののけたちと対決、事件の背後で糸を引く妖術使い・現八郎を追い詰めていくこととなります。

 しかしここで意外な真実が明かされることとなります。
 現八郎が骨から甦らせ、自分の手駒として使っていた美女・八重。実は彼女の正体はかつて妖術で人々を苦しめた末に退治され、遺骸を封印された妖女であり、現八郎は彼女に一度殺された上で操られていたのであります。

 その事実を知った現八郎は前非を悔い、かつての親友であり、10年前の対決で天狗界に落とさんとした(この辺りのセンスは伝奇的に実に見事で痺れます)新九郎を己の命と引き替えに復活させることに。
 そして復活早々、新九郎は諸悪の根源たる八重と激突――!


 と、いきなりもの凄い盛り上がり方で始まる第4巻ですが、しかしこれ以降の展開に比べればまだまだ序の口であります。
 優れた修験者である新九郎の力を持ってしても苦戦を強いられる八重の力と彼女の新たな野望。苦境の中で新たな絆を育む鈴音とおじゃる様。そして新九郎に味方するのは――
 このような表現はあまりよろしくないかと思いますが、物語はクライマックスの大決戦に向け、むしろ少年漫画的盛り上がりを見せていくこととなります。

 しかしその一方で、濃やかな心情描写も並行してしっかりと描かれていくのが本作の一番の魅力であることは間違いありません。
 その最たるものは、鈴音と新九郎の関係性でありましょう。

 幼い頃に「ととさま」と慕いつつも、実は鈴音と新九郎の年齢差は10歳ばかり。そして人の世と時間の流れの違う天狗界と人間界の狭間にいた新九郎にとっては、この10年間の時間はなかったも同然であります。
 ということは今この時、二人はほとんど同じ年。鈴音は幼い頃からの憧れの人との再会に胸をときめかせ、そして新九郎は美しく成長した鈴音に戸惑いを隠せず……

 と実に微笑ましくも、二人にとっては悪霊との戦いよりもある意味深刻なこの関係性の変化。特に鈴音にとっては、彼が「ととさま」なのか「新九郎様」なのか、自分自身でも戸惑うばかりであります。
 そんな二人が、それぞれの想いとどのように向き合うのか、というラブコメ的展開の先に待っているものは――おお、そうかこの境地であったか、と頷かされること請け合いの展開。

 一歩間違えると抹香臭くなりかねないクライマックスを、素直に納得させてくれるのは、キャラクターたちの特異な背景事情の設定と、そこからの(一種ラブコメ的な)彼女たち自身の成長、そして伝奇的な物語の展開――この三つが見事に絡み合い、美しい救いの姿を描き出しているからでありましょう。

 本当に遅ればせながら、読むことができてよかった……そう感じられる作品であります(連載形態等、紆余曲折を経た作品らしいので、一気に読めたことは幸いかもしれませんが……)


 そして本作には続編、その名も『お伽もよう綾にしき ふたたび』が。既に5巻目が刊行間近と出遅れてしまいましたが、今度はしっかりとリアルタイムで物語を見届けたいと思います。


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