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2014.12.19

『暴れ日光旅 大江戸無双七人衆 』 一気呵成の顔見世興行

 今年もほぼ月一冊以上という破格のペースで文庫書き下ろし時代小説を発表してきた早見俊の新シリーズであります。スピード感溢れる表紙が気になって手に取ってみれば、これが真っ正面からのチャンバラ大活劇でありました。

 主人公・大道寺菊千代は、両親の顔も知らぬまま鞍馬山で修行を積んできた青年武士。しかし恩師から江戸は寛永寺の南光坊天海を訪ねよと言われたその晩、師は謎の忍者集団に殺され、わけもわからぬまま江戸に出ることとなります。
 何とか辿り着いた江戸で対面した天海が彼に命じたのは、江戸の治安を守るという役目――島原の乱が終結し、表面上は天下太平になったように見えても、その背後で悪事を企む者たちはまだ無数にいたのであります。

 天海の下にいたのは、そんな悪人を退治してきた豪の者たち――
 比叡山出身の薙刀使いの荒法師・剛峻
 剣の達人だが女装趣味の美男旗本・清野陣十郎
 火薬使いの少年忍者・弥吉
 拳法使いで大食らいの明国人・陳宗文
 雑賀党の流れを汲む鉄砲使い・孫三郎
 天海の腹心の女忍び・梢

 これら個性豊かな面々の束ねを命じられた菊千代は、大江戸鬼門党の名を与えられたチームとして活動を開始するのですが……その初仕事となるのは、風魔小太郎、そして明石全登という、江戸で暗躍する二つの悪党退治。
 どちらも戦国時代の終わりとともに姿を消したと思われていた両者は、それぞれ残党を率いては数々の悪事を働いているというのであります。

 そして彼らとの戦いの背後には、豊臣家の隠し財宝の存在が。さらにその在処を握るのは、菊千代自身だというのですが……!


 と、相当にテンションの高いストーリーですが、物語展開もそれにふさわしく冒頭から一気呵成に展開。とにかく活劇また活劇で、クライマックスの日光での決戦までアクションまたアクションです。
 おかしな表現かもしれませんが、良い意味でお行儀の悪い展開と言いましょうか、とにかくアクションを見せたいんだ! という想いが伝わってくる内容であります。

 個人的にはプロフェッショナルたちのチームものが大好きということもあって楽しませていただいたのですが、しかし残念な点もあります。
 まず菊千代をはじめとするキャラクターの造形が甘めな点。特に菊千代の場合、いきなり戦いの渦中に放り込まれて大変なのはわかりますが、今ひとつしゃっきりしないキャラクターで、ところどころで見せる甘さが好感にあまり繋がらないのが残念であります。

 また構成の方も、中盤で物語の中心となる仕掛けの種を明かしてしまうのが(まだその先があるとはいえ)もったいない。ラストのどんでん返しも、どう考えても意外性はなく……


 と、期待している分、辛めの評価となってしまうのですが、今回は顔見世興行といったところでしょうか。
 この勢いにキャラとストーリーがガッチリ噛み合えば、相当面白い存在になることは間違いないのですから――


『暴れ日光旅 大江戸無双七人衆 』(早見俊 新潮文庫) Amazon
暴れ日光旅: 大江戸無双七人衆 (新潮文庫)

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