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2015.01.10

『お伽もよう綾にしき ふたたび』第3-4巻 過去から繋がる人と人の絆

 室町時代を舞台に、もののけを招く体質の少女・鈴音と、修験者の青年・新九郎のカップルがもののけや怨霊に挑むファンタジー『お伽もよう綾にしき』の続編の第3,4巻であります。以前も触れたように、今回は前日譚がメイン。新九郎の視点から、前作に至るまでの物語が描かれることとなります。

 妖術師・大木現八郎や大怨霊・八重から伊摩の国を守り抜いた鈴音と新九郎ですが、二人の縁は10年前の出会いに遡る……というのは、前作の第一話に描かれたとおり。
 今回紹介する第3巻と第4巻の中盤まででまず描かれるのは、その出会いに至るまでの新九郎の過去の物語であります。

 元は歴とした武家の出ながら、戦乱で一族は滅び、老いた侍女・竹野とともに落ち延びてきた幼い新九郎。
 そんな彼は病に倒れた竹野を救おうと奔走するうち、やはり元武士の修験者・正験と出会い、己の隠れた霊能に気付くことになります。

 やがて訪れる竹野との別れを経て、正験の弟子となった新九郎。やがて現八郎との出会いと決別、正験との別れ、そして旅立ち……と、前作で語られた部分も多いのですが、しかしここで新九郎の目から丁寧に描き直される物語は、なかなかに新鮮かつ印象的であります。

 特に新九郎が二度にわたって肉親代わりの人々と永遠の別れを告げる場面は、(こういう言い方はいかがなものかと思いますが)経験者であれば必ずやその時のことを思い出して、胸を突かれるような想いとなるのではありますまいか。
 過度にエモーショナルではなく、むしろ静かな、サラリとしたものとすら見えるにもかかわらず、ここまで印象的なのは、作者の筆の力というほかありますまい。


 そして新九郎の物語はさらに続きます。鈴音との初めての出会い、前作ではほとんど伝聞で語られるのみだった10年前の現八郎との対決の過程、そして時は流れ、おじゃる様と一体化した中からの成長した鈴音との再会――

 新九郎の少年時代以上に、この辺りのエピソードは、前作のリトールドであり、その意味では新鮮さはありません。
 しかし既に語られた物語であるからこそ、そこから漏れたディテール――新九郎の感情というものが、より鮮明に伝わってくるのもまた事実です。

 特に過去と現在、二度の鈴音との出会いにおける新九郎の心境の違いが実にいい。
 過去においては、「ととさま」と呼ばれて大いに戸惑いつつも、やがて自分のそれに通じる鈴音の孤独感を理解するようになる姿。
 そして現在においては、美しく成長した鈴音に戸惑いつつも(おじゃる様の目を通しているためか、最初は異なった姿で鈴音が見えるという描写の細かさにも感心)、彼女に惹かれる自分を自覚し、受け入れていく姿……

 本作が人ともののけの対決を中心に据えつつも、どこまでも柔らかく暖かい印象を受けるのは、こうした人と人の絆を丁寧に描く点によると、今更ながらに再確認させられた次第です。


 そして第4巻の後半から物語は現在のその後の物語――再び後日譚としての続編に移行します。
 伊摩の国の寺に現れ、ある名簿を奪って消えたもののけ。夫婦揃っての追跡を命じられた新九郎と鈴音、そしておじゃる様と現八郎天狗は、大した妖気もないことから物見遊山気分でこれをのんびり追いかけるのですが……

 まだ物語は謎の提示の連続という印象で、ほとんど全く先は見えないのですが、メイン四人のやりとりは相変わらず楽しく、そして新キャラクターもなかなかに可愛らしい。


 発売されたばかりの第5巻にもすぐ手を伸ばしているところであります(ようやく追いつきました……)


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