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2015.01.28

『猫鳴小路のおそろし屋』(その一) 時間と空間を超えて集まった奇譚たち

 ヒットに安住せず、次々とユニーク……というより冒険的な作品を発表してきた風野真知雄の新シリーズは『猫鳴小路のおそろし屋』。江戸は新両替町にひっそりと佇む骨董品店を舞台に、そこに集まる品物に込められた因縁を語る連作集ですが……しかしそれに留まらぬ、得体の知れぬ物語であります。

 物語の舞台――語り起こしの場所となるのは、新両替町(今で言う銀座)の路地裏に隠れるように営まれる骨董品店「おそろし屋」。
 基本的に常連客のみを相手とするこの店にあるのは、どこから集めてきたのかいずれも珍奇な品物、しかもその品物には奇怪な曰く因縁付きのものばかり――

 というわけで、おそろし屋に持ち込まれた品物に込められた奇譚・秘話を、店主であるうら若き美女・お縁が客に語るというのが、本作を構成する全4話のうち、3話までの(何故このような表現になるかは後ほど)スタイルであります。

 ここで取り上げられるのは、
・血の染みのついた武田信玄の風林火山の旗
・何者かの歯形がついた水戸黄門の杖
・葛飾北斎の「百物語」幻の六枚目
という歴史上の有名人にまつわるものばかり。しかもそれぞれが、彼らのイメージを覆しかねないものばかりで……という趣向であります。

 骨董品もの(古道具もの)とでも言いましょうか、歴史を経てきた様々な品物を中心に据えた物語は、時代ものに限らず、一つのサブジャンルとして成立している感があります。
 本作もその一つということになりますが、しかしそうした作品の多くが、「現在」を舞台にしているのに対し、本作はその品物が生まれた「過去」の物語を中心にしているのが面白い。なるほど、この手法であれば、時代や場所を問わず、バラエティに富んだ物語を作り出すことが可能でありましょう。

 そしてまた、語られる個々の物語が面白いことも言うまでもありません。特に信玄の死後、彼の遺言で死を秘している期間中に信玄の幽霊が甲斐に出没するという第1話など、一度事件が解決したかに見えて、更にその背後にとんでもない秘密が……という奇想が実に楽しいのであります。


 しかし本作をさらにユニークなものとしているのは……と、長くなりますので次回に続きます。


『猫鳴小路のおそろし屋』(風野真知雄 角川文庫) Amazon
猫鳴小路のおそろし屋 (角川文庫)

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