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2015.02.15

『明治異種格闘伝 雪風』第1巻 新武術、その名はボクシング

 明治という時代は、武士の時代が終わりを告げた後の時代でありますが、それ故にこそ新たに始まった武の形もあります。それを題材とした作品は少なくありませんが、本作もその一つ。武術の達人が群れ集う中、孤拳を武器に戦う少年の物語であります。

 時は明治19年の東京、破落戸に絡まれていた蕎麦屋の看板娘・楓を助けたのは、雪村風太郎と名乗る少年。
 それなりの剣術を使う相手に触れさせることもなく、無手で叩きのめした風太郎に声を掛けたのは、旧相模柴原藩主、今は侯爵の柴原典膳の家臣でありました。

 徒手空拳の武術の達人のみを集め、命懸けの御前試合を開催するという柴原侯爵。初めは興味を示さなかった風太郎ですが、ある理由から参加を決意いたします。
 そして始まる御前試合、八人の参加者によるトーナメントの第一試合に登場した風太郎の相手は、強すぎることで己の力を封じざるを得なかった大横綱で――


 という本作、謎の武術を操る少年が、様々な流派の猛者を相手に異種格闘技戦を……というのは、これはもう格闘漫画の定番中の定番でありますが、本作ならではの特徴は、舞台が最初に述べたとおり明治時代であることと――そして何より、主人公の使う武術がボクシングであることでしょう。

 その知名度と、技術体系の完成度と裏腹に(あるいはそれ故に)、そして使うのが拳のみであるためか、残念ながら異種格闘漫画では敵役、やられ役が多いボクシング。
 それは明治時代を舞台とした格闘ものでも例外ではありませんでしたが(大抵は憎々しげな体兵の欧米人が使って主人公に叩きのめされるというシチュエーション)、主人公がボクシングを使うというのはかなり珍しいという印象があります。

 考えてみれば、この時代の日本にとって、ボクシングとはまだ見ぬ新武術。既にヨーロッパでは18世紀半ばには近代ボクシングが成立していたわけですが、この時代の日本人にとって、ボクシングの技術は、全く異質の技として感じられたことは想像に難くありません。

 本作はそのボクシング使い(というのも妙な表現ですが)を主人公に据え、そして最初に戦うのが日本の国技とされる相撲というのは、なかなかに象徴的であり、興味深いものがあります。


 ……が、そうした点はあるものの、この第1巻の時点では、漫画としての面白味は薄い、というのが正直な感想であります。

 絵的な魅力の薄さ、キャラクターの個性の乏しさというのも小さくないのですが、何よりも舞台設定にリアリティが感じられないのが苦しい。先に述べたとおり、本作の特徴の一つである明治という舞台設定が活かし切れていない、いや足かせになっている(特に創生期の格闘ゲームの悪役然とした柴原侯爵の言動など、明治時代にあれはいかにも苦しい)とすら、感じられるのです。

 もちろんまだ第1巻は導入部ではありますが、ここからどれだけ読者を惹きつけることができるか……それはもちろん、本作の中心を成す異種格闘戦の魅力をどれだけ描けるか、にかかっていることは間違いありません。

 この第1巻を読んだ限りでは、本作の格闘技はリアル路線と申しましょうか、便利な秘伝・必殺技というものはあまり登場しない模様(もっとも、近代格闘技たるボクシングでそれをやられても、とは思います)。
 その中でどれだけ迫力を、魅力を見せられるか……待った無しであります。


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