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2015.02.16

『戦国妖狐』第14巻 決戦第二章、それぞれの強さの激突

 連載先が雑誌からwebメディアに変更となりましたが、変わらぬテンションで続く戦国ファンタジー『戦国妖狐』も、早いもので第14巻。前の巻から突入した無の民との決戦は、第二章、第三章に突入、数々の因縁に一つ一つ決着がつけられていくこととなります。

 数多くの闇(かたわら)を洗脳して手駒と使い、千夜を狙う無の民。闇を傷つけることを躊躇い、苦戦する千夜がたどり着いた境地、それは千の腕で周囲を救う、あたかも千手観音の如き姿だった――
 という、設定的にも物語的にも見事な、最高に盛り上がる展開があった後に、どれだけテンションを落とさず物語を描くことができるのか……という心配は、完全にこちらの杞憂でありました。

 この巻で描かれるのは、真介対灼岩、ムド対万象王、道錬対神雲――いずれも劣らぬ好カードであります。
 その中でも、かつて慕いあいながらも引き裂かれ、ようやく再会したと思えば敵味方とされていた真介と灼岩、そして幼なじみであり断怪衆の同門にしてそれぞれに強さを求めてきた終生のライバルである道錬と神雲――この二組の因縁は、第一部からこの物語を読んできた者にとってはやはり感慨深いものがあります。

 さらに黒月斎の左道を引き継いだ月湖の参戦に、超人バトルの前に出番なしかと思われた断怪衆の意外な活躍と、大河少年漫画のクライマックスに相応しい盛り上がりの連続、いやはや、物語が始まった時には、ここまでになるとは、正直予想していなかっただけに、嬉しい驚きです。


 そしてその中でも特に強い印象を残すのは、やはり神雲と道錬の、文字通り竜虎対決でありましょう。
 先に述べたとおり、その人生の大部分を共に過ごし、かたや龍、かたら虎の力を宿して人を超える力を身につけた二人。
 闇を討つというその目的にとって、もはや過剰とも言えるまでの強さを手にした二人でありますが……彼らがその強さを求めてきた理由、それがここで描かれることとなります。

 一口に強さと言っても、その意味するところが――目的が、目指すところが異なるのは言うまでもありません。
 ここで描かれるのはまさにその違い。道錬が自分にはないと認め、そして後に神雲自身が捨て去ることとなった強さ。道錬が長き修行の末に見出した彼自身の強さ……彼らの置かれた立場を思えば、そのどちらが正しいと断じることは出来ませんが、しかしどちらが望ましいかは、判断できましょう。

 人でありつつも、強さのためにその身に異形を宿し、半ば人を捨てた二人は、人と闇、神――人とそれ以外の関係性を描き、そしてそれを通じて人そのものの姿を描いてきた本作において、象徴的なものと言えます。
 それを思えば、あまりに激しすぎる激突の末、立っていた者がどちらであったか……その結末は、納得できるものであります。


 この巻においていくつかの因縁に決着がついたものの、まだ残された敵、残された戦いは多く、結末は見えない本作。
 しかしその先にあるものが、人に、いやそれ以外の存在にとっても「光」あるものであることを祈りたいところです。

 ……が、どうにも心配なところもあって――いやはや、最後の最後まで振り回されそうであります)。


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