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2015.02.19

『陰陽師 瀧夜叉姫』第6巻 対決 怪僧・浄蔵と魔人・将門公

 長い長い過去の物語により、その一端が明らかとなった平将門の乱の真実。そして舞台は「現在」に移り、いよいよ物語は本筋に――と思いきや、その前にもう一段階、将門公にまつわる大きな謎の一つが明らかになることとなります。

 かつての英雄から変貌し、人ならざる魔人と化した将門を、数々の力を結集して辛くも討った俵藤太。斃れてもなおも暴走する将門を止めるため、彼は龍神から得た黄金丸――それに斬られた傷は二十年間塞がらないという名刀で、その五体を断つことを決断します。
 しかし、関八州に封じられた将門公の五体は何者かに盗まれ、そして都で晒された首も何者かに持ち去られ……

 そしてこの巻で語られることとなるのは、その首の行方。
 そう、それは意外にも、強い法力を持つ高僧であり、将門打倒のために藤太に矢を与えた浄蔵が自ら盗んだものであったのであります。

 この浄蔵、本作で語られているように将門の乱の際に、都でこれを調伏に当たっただけでなく、藤原時平が菅原道真公の怨霊に悩まされた際に祈祷して奇瑞を起こしたり、八坂寺の塔が傾いたのを呪いで直したりと、「その手」の逸話も多い人物。
 ちなみに父の三善清行、兄弟の日蔵とも、本作の原作者の『おにのさうし』に収録された作品に顔を出している人物であります。

 その意味では晴明の先輩(?)である浄蔵ですが、本作で描かれるその姿は、いかにも善知識らしい穏やかな表情と、法力で戦う僧としての厳しく激しい表情と、(ビジュアル的にも)相反する二つの顔を持つ、一種の怪僧として描かれているのが何ともユニークであります。

 その浄蔵と、体から切り離されてもなお命を持ち続ける将門公の首との対決の様が、この巻のクライマックス。浄蔵の法力が勝つか、将門公の執念が勝つか、傍から見れば異様な、そして行き詰まる対決の果てに何が起こったのか――
 それはやがて巡り巡って、この物語の冒頭から語られてきた怪事件の数々と結びついていく、という構造も面白いところであります。


 が、今回、物語としては面白いのですが、漫画としてみた場合には少々味気ない、というか物足りないというのが正直な印象があります。
 それは簡単な理由で、上に述べた浄蔵の過去の物語(それもこれまでの巻に比べればかなり少ない分量なのですが)を除けば、ほとんどが会話シーンで構成されていることによります。

 これは原作からしてこのような構成であったかと思いますので、ある意味仕方がないところではありますが、しかし特に冒頭に収められた晴明と博雅のやりとりなど、二人の関係性を示すシーンであるだけに、もう少し何かこの漫画ならではの見せ方が欲しかった……というのは少々贅沢な希望かもしれませんが、正直な気持ちでもあります。

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