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2015.03.31

『BURNING HELL 神の国』 地獄と人間を描く二つの物語

 時は江戸時代、日本列島と朝鮮半島の真ん中に浮かぶ、日朝の凶悪犯を流刑する極島。そこに流された日本の食人鬼剣豪・ジュウを待っていたのは、朝鮮の殺人鬼医師・ハンだった。激しくぶつかり合う二人だが、そこに西洋の海賊船が渡来。海賊の「宝」を狙う二人の前に、黒魔術を操る船長が現れる……

 私は連載漫画は基本的に単行本派なのですが、それ故に単行本化されると思っていたものがされず、後悔することがままあります。

 『週刊ビッグコミックスピリッツ』誌に短期集中連載され、連載第1回にこのブログで紹介し、残りは単行本化されてから……と思いきや、いつまでも単行本化されずにいた、梁慶一&尹仁完の『新暗行御史』コンビによる『BURNING HELL』もそんな作品の一つ。
 しかし実に7年後に、昨年『月刊!スピリッツ』誌に短期集中連載された『神の国』とカップリングの形で単行本化されるました。

 『BURNING HELL』の主人公となるのは、日本人武士・ジュウと朝鮮人医師・ハン。
 それぞれ異なる理由から絶海の孤島に流刑となった二人が、海賊たちを向こうに回し、やむなくコンビを組んで大暴れ――と書けば、真っ当な(?)時代アクションのように見えますが、とんでもないのは主人公二人の素性。

 ジュウは千人以上の武士を殺し、喰らった食人鬼。ハンは千人以上の人間を殺し、解剖してきた殺人鬼――
 ジュウは流刑先で解放されるやいなや護送の役人たちを鏖殺し、ハンは同じ島に流刑されてきた人々を生皮剥いで解剖し……と、とにかく、無人島で絶対一緒に暮らしたくない筆頭のような連中なのであります。
 そんな二人の暴れっぷりたるや推して知るべし。もう道理も理屈もへったくれもなく、ただ殺したいから殺す、こいつらが地獄だとしか言いようのない惨状であります。

 それでいて、それぞれ左目と右目を失った二人が、いざとなれば互いの目を補い合うような動きを見せるというのは、お約束ながら気持ちイイところですが……

 何はともあれ、本作ではそんな二人の大暴れが冒頭からラストまで、ほとんど休みなく続くのですが、全4回の中編とはいえ、これは凄まじいパワー、この辺りはもう作者たちの、特に作画の梁慶一の力量としか言いようがありますまい。

 物語の方は、二人が「ロア」の秘術を操る船長を叩き潰し、生け贄にされかかっていたイギリスの王女を救い出した、いや奪い取ったところで幕となるのですが――
 結末ではさらなる地獄の連続が示唆されているだけに、いつの日か、再び地獄の釜の蓋が開く時を恐れつつも待ち望んでしまうような作品であります。


 もう一編の、こちらは金銀姫が0原作を担当した『神の国』は、(おそらくは)架空の朝鮮王朝期を舞台としたゾンビ時代劇。
 金で雇われ、刺客に追われる王子イムンを護衛することとなった山賊ジェハが、死者が夜になると蘇り生者を喰らうという奇病・生死疫が蔓延した地で逃避行を続けるという物語であります。

 ここで登場する生死疫の罹患者は、いわゆる走るタイプのゾンビなのですが(ここで梁慶一が『死霊狩り』を漫画化していたことを思い出しました)昼間は活動できないこと、噛まれても必ずしも罹患するわけではない点が特徴。
 特に後者には、この病の正体・発症の条件に繋がるある凄惨な秘密が隠されており、それが本作の世界観と、そしてイムンの背負っているものと結びついてくるのには唸らされます。

 そしてその中で、世を拗ねていたジェハの過去の物語も同時に浮かび上がっていくという構成も巧みで、こちらもいわば第一部完といった終わり方ながら、やはり続編を期待したくなる物語でありました。


 それぞれ全く異なる形ながら、この世に生まれた「地獄」と、その中でも逞しく生きようとする(そしてそれが地獄を生んでしまったりするのですが)「人間」の姿を描いた二編を収録した本書。
 どちらもそれなりに重く血腥い作品ではあり、人を選ぶかも知れませんが、読み応えある一冊であることは間違いありません。


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