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2015.04.12

幸田廣信&太田ぐいや『蒼眼赤髪 ローマから来た戦国武将』第3巻 そして彼の戦う理由は

 戦国時代、ローマから日本に渡り、蒲生氏郷に仕えたという実在のイタリア人戦国武将・山科羅久呂左衛門勝成ことジョバンニ=ロルテスを描く『蒼眼赤髪』の第3巻、最終巻であります。信長の下で氏郷とともに戦うこととなったジョバンニの見たものは……

 イエズス会宣教師オルガンティーノの護衛として海を渡り、旧知の間柄である氏郷のもとに身を寄せることとなったジョバンニ。しかし蒲生家は信長の力の前に屈し、ジョバンニも成り行きから信長に仕えることとなります。
 力で人を従わせる信長を「外道」と呼びつつも、彼がこの国を変える「革命家」と信じて戦うこととしたジョバンニですが、しかし信長の革命の道はまだまだ険しく……

 ということでこの第3巻の中心となるのは、朝倉義景・浅井長政をはじめとする信長包囲網との戦い。天下布武を目指して突き進む信長に対抗するため、越前・近江・摂津・阿波と、文字通り彼の領土を包囲する形で諸勢力が結んだこの包囲網との戦いは、おそらくは信長にとって最も厳しい時期であったのではありますまいか。

 本作ではその仕掛人が実は秀吉だった! というとんでもない――とはいえ、本作の秀吉像からすれば十分あり得る――趣向なのですが、その最前線に立たされた氏郷とジョバンニは、誰が仕掛人だろうと戦うほかありません。
 しかし、正否は別として信長の圧倒的な力を信じて従ったジョバンニにとって、その信長が危機に立たされるという状態は、彼自身の信念の危機でもあります。

 かくて本作における信長包囲網は、ジョバンニの信念を――彼が何のためにこの国で戦うのか、その意味を問いかけるものとして描かれることとなります。
 折しもヨーロッパ諸国が本格的に日本侵攻を狙うという情報がもたらされ、そして秀吉もまた氏郷とジョバンニの力を求める中、ジョバンニが選んだ道とは……


 40年という戦国時代でも決して長いとは言えない生涯とはいえ、まだこの後20年以上生きることとなる氏郷と、彼に仕えたジョバンニにとって、この第3巻の時点は文字通りまだ道半ば。

 その意味では本作は中途で終わったと言えるのですが、終盤かなり駆け足となりつつも、ジョバンニの信念を再び問いかけ直すという形で、この物語の中核となる、彼が日本にいる意味を浮き彫りにした上で、この先の彼らの生に向けて、開けた終わり方を見せたと言えるでしょう。

 正直なところ、この巻で初登場となる眼鏡(ゴーグル)っ子の家康等、戦国武将に対する今風のキャラクター付けが上手くいっていたとは言い難い印象は最後まで残ります。本作に限らず、戦国ものなどで過剰なキャラ立てが、個性的な物語を逆に食ってしまうケースはまま見られるわけですが……

 しかし本作はジョバンニがその中に埋没する(というより周囲のキャラを濃くしなければ本当に全部持っていきかねないキャラなのですが)、その存在感をもう一度見せた上で完結を迎えたのは、まずは美しい結末であったとも感じるのです。


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