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2015.04.01

『オニウドの里 秘闘秘録新三郎&魁』 今度は脱出劇とゲリラ戦!

 山の民たちから離れ、江戸に向かう新三郎と魁。しかし宿敵の忍び・蜘蛛一族の頭領の息子・小太郎の罠に填まり、新三郎は一族の本拠の里に囚われてしまう。何とか脱出せんとする新三郎、そして救出に向かった魁を次々と襲う忍びの罠。二人は里から脱出できるのか、そして小太郎の真の狙いとは……

 先日、最終巻第6巻『シャクシャインの秘宝』が刊行された『秘闘秘録 新三郎&魁』シリーズの丁度折り返し地点に当たる第3巻が本作であります。
 脳天気なバカ侍から心身ともに逞しく成長した苗場新三郎と、山の民最強のハンターにしてスナイパーの魁、二人の冒険は、今回も趣向を凝らした舞台で展開されることとなります。

 甲斐山中の隠れ谷での、山の民と謎の忍び・蜘蛛一族の決戦を生き延び、カムイの導きで一族の本隊から離れて江戸に向かうこととなった新三郎たち。
 執念深い蜘蛛の残党を警戒して偵察に出た新三郎と魁ですが、早速敵の狡猾な罠に新三郎が捕まり――と、今回もいきなり気になるシチュエーションから物語は一気に展開することとなります。

 新三郎が連行されたのは、本作のタイトルとなっているオニウドが茂った隠れ里――蜘蛛一族の里。そこで前作ともに戦った山師たちと再会した新三郎ですが、彼らを人質に、頭領の息子・小太郎から執拗な拷問を受けることになります。
 ただ一人外に残された魁も、もちろん新三郎を救うべく行動を開始しますが、何しろ里は忍びの本拠、幾重にも張り巡らされた罠の前にさしもの彼も危機また危機の連続……

 と、集団対集団の攻防戦(防衛戦)が繰り広げられた前作からうって変わり、今回は味方側が(山師たちを除けば)たった二人で多数の敵を相手にする本作。
 その点だけ見れば、第1作の前半、すなわちシリーズの原点に戻ったとも言えますが、舞台となるのが敵地のど真ん中、そこで数も知れない敵を相手にするというのは、これまでにない趣向であり、実に新鮮であります。
(しかも新三郎サイドは脱出劇、魁サイドはゲリラ戦と二人主人公という特色を活かした展開なのも実にうまい)

 驚くべきは物語の大半――実に8割近くがこのシチュエーションのみで展開していくことで、それだけの分量を、こちらを全く飽きさせることなくグイグイと引っ張っていく物語のパワーと作者の力量にはただ感心するばかりです。

 しかしそれでは残る2割は、となりますが、そこからの展開は、こちらの想像を絶するもの。
 これまで山の民が活動する山中が主たる舞台ということもあって、正史と関わってくることはほとんどなかった本シリーズですが、ここに来て意外な形で物語は表の世界と関わってくるのには驚かされます。

 ここまで来たら全て里の中で物語を決着させてくれた方が……などと最初は思いましたが、まさかここに繋がってくるとは。
 ここまで来たら留まることなくスケールアップして欲しい、というこちらの期待に応えるかのような引きで物語も続き、後半戦に向けて理想的な展開と言うべきでありましょう。


『オニウドの里 秘闘秘録新三郎&魁』(中谷航太郎 新潮文庫) Amazon
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