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2015.04.10

『シジュウ主従』 Webコミック発、おかしな主従の冒険譚

 最近はWebコミックも全く珍しくありませんが、先日スタートした小学館のWebコミック『艶男HISTORICA』は、そのタイトルから何となく想像がつくように、「女性向けイケメン時代劇」というコンセプト。その第1弾ラインナップの中で、特に気になったのが、浅岡しゅくによる本作です。

 浅岡しゅくといえば、まず思い浮かぶのが豊臣家の人質時代の真田幸村を主人公とした『御指名武将真田幸村 かぎろひ』。いかにも今風の絵柄、キャラクターデザインの中に、何となく黒いものを感じさせる作風が印象的な作品でありました。
 そんな作者によるこの短編は、やはり戦国時代末期を舞台とした戦国武将ものですが、やはり実在の人物をユニークにアレンジしたキャラクター設定が印象に残る作品です。

 本作の主人公となるのは、若君とそれに仕える老従者という、年の差――それもタイトルどおり、ほぼ四十年の差が――がある主従。
 若君の方は普段から血糖値が低くダウナーな印象の青年、そして老従者の方は、そんな主に献身的に仕えるように見えて、実は鍛えると称してヒドい目に遭わせることばかり考えているとんでもない爺さんであります。

 物語は、故あって二人旅の先を急ぐ主従が、途中出会った土地の娘ともども山賊に捕らえられて……という展開。
 作者の作品では何故かお馴染みの、登場人物がやたらと縄で縛られるという場面がある(ちなみに作者は、以前読み切りで戦国武将拷問漫画を執筆)のですが、そこから若君が……というのは、お約束とはいえ本作のキモでしょう。

 面白いのは、ここに至るまでに若君が異常におにぎりに拘っていることで、これが終盤まで伏せられている彼の正体に繋がってくる点。
 もっとも、従者の方は早々に名前が出ますし、若君の父の名もチラリと示されるため、気づく人は気づくのだとは思いますが、ああ、あの父子は二人揃っておにぎり食べていたなあ……と、ニヤリとさせられるのであります。

 短編ゆえにあっさり気味の味付けではありますが、それをある意味逆手に取ったような展開は、なかなかに好ましいものであります。
 何よりも、クライマックスに至ってもヒドいことしか言わない従者のすっとぼけた(?)キャラクターが面白く、この一作で終わるのはもったいない組み合わせ。

 この若君、奥方の方も有名人だけに、次はぜひこちらも……などと期待したくなるのであります。


 なお、この『艶男HISTORICA』の第1弾ラインナップは、本作のほか、さくらばつかさの新選組もの『蒼月の輪』、浅田めぐ美の吉原もの『吉原由縁桜』と全3作品。
 前者は山南敬助を主人公に、彼とは犬猿の仲に描かれることも少なくない土方との間に存在した確かな絆を描き、後者は駕籠の中の鳥である若い遊女の束の間の真実の恋を描いた作品ですが、どちらも完全に1作でクローズした内容ということもあり、個人的にはやや……というのが正直なところではあります。

 公開されているサイトのシステムが今一つ安定していない印象もあり(サイトからだけでなく、今後はKindle等でも読めるようになる模様ですが)まだまだこれからという印象はあります。
 しかしその目指すところなどなかなかに貴重なレーベルだけに、本作のみならず、レーベル自体の今後の展開が気になるところです。


『シジュウ主従』(浅岡しゅく 小学館mobaman-F『艶男HISTORICA』掲載) Amazon
シジュウ主従 (mobaman-F)


関連サイト
 『艶男HISTORICA』

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