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2015.05.06

『ランティエ』6月号で平谷美樹『水滸伝 1 九紋竜の兄妹』関連の記事を担当しました

 先日発行された角川春樹事務所のPR誌『ランティエ』6月号の特集「平谷美樹の世界」について、構成と文を担当させていただきました。先月角川春樹事務所の時代小説文庫から刊行された、平谷美樹『水滸伝 1 九紋竜の兄妹』を中心に、作品紹介と平谷作品の魅力を紹介させていただいています。

 普段からこのブログをご覧いただいている方はご存じかと思いますが、平谷作品も、水滸伝も、これまでかなりの頻度で紹介させていただいております。つまりそれだけどちらも大ファンということなのですが、さてそんな作品の紹介を担当させていただけるということで、こちらも大いに気合いが入った次第です。
 特に平谷作品に通底する魅力と、それが『水滸伝』と如何に繋がっていくかについては是非ご一読いただければと思います。


 さて、記事の宣伝はこれくらいにさせていただくといたしまして、作品そのものの紹介を、ブログはブログとしてさせていただきましょう。

 本作は言うまでもなくあの水滸伝の、新たなリライトと言うべき作品。これまでも様々なリライトが存在する水滸伝ですが、この第1巻のあらすじ的には、比較的オーソドックスな原典のリライトと言えるかもしれません。
 すなわち、王進と出会い修行を積んだ史進が少華山の山賊たちと対決、交誼を結ぶも、それがためにお尋ね者に。一方、林冲も妻が高キュウの養子に目を付けられたことから、奸計により都を追われることに……と。

 しかし、一見大きく変わっていないように見えて、大きく原典とはその趣を異にするのが本作。それはまず、「九紋竜の兄妹」という副題からも明らかでしょう。そう、本作の史進には史儷がおり――史進が五紋竜、史儷が四紋竜の、二人で九紋竜なのであります。

 さらに、梁山泊の好漢たちの宿敵である高キュウもまた、本作では独自の顔を見せることとなります。
 ならず者から成り上がり、好漢たちを苦しめた梁山泊の宿敵ともいえる高キュウですが、本作の高キュウは、俗物の仮面の下に大望を持つ、隠された顔を持つ男なのであります。

 二人に分かれた史進、もう一つの顔を持つ高キュウ……この第1巻の中心となるこの二人(三人)の存在により、本作は従来の水滸伝とは異なる、複眼的な物語を描いていくこととなります。
 単純明快な豪傑の視点のみならず、女性としての視点を。国を私する者の姿の下の、国を甦らさんとする者の姿を――こうした角度から描かれる本作は、一見原典に近い物語だからこそ、強烈にその個性を印象づけてくれるのであります。


 そしてそんな平谷『水滸伝』の中で描かれていくのは、おそらくは「人間」と「国」の在り方なのではありますまいか。

 ここで『ランティエ』の記事に戻りますが、今回の記事では、本作の源流として(同じ角川春樹事務所から刊行された)『義経になった男』『風の王国』の二作品を紹介しています。
 ともに作者の作品の中でも歴史ものとしての性格が強い作品ですが、そこに共通するのは、この「人間」と「国」の在り方への問いかけであります。

 理想の「国」とは何なのか。「人間」は「国」とどう相対するべきなのか――
 伝奇エンターテイメントの中で、その問いかけを様々な形で行ってきた作者の作品に連なるものとして、この『水滸伝』はあるのではないか……そう感じているところであります。

 自分がこのような形でタッチすることができたからというだけでなく、作者のファンとして、水滸伝ファンとして、この先の展開を心から楽しみにしている次第です。


『水滸伝 1 九紋竜の兄妹』(平谷美樹 角川春樹事務所時代小説文庫) Amazon
水滸伝 1 九紋龍の兄妹 (ハルキ文庫 ひ 7-17 時代小説文庫)

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