叶精作『新選組・オブ・ザ・デッド』 集団対集団、新選組対ゾンビ
「オブ・ザ・デッド」ブーム(?)もここまで来たか、と一部で話題となった映画『新選組・オブ・ザ・デッド』の漫画版であります。単行本の発売はほぼ一月前で恐縮ですが、続編(?)が舞台化されてまさに今月上演されるというタイミングということで、ここに紹介する次第。
さて、この漫画版の原作となった映画版は、幕末にゾンビという意外性以上に、バナナマン日村が主人公という点で話題になった作品。その日村そっくり(と言ってよいものか)な主人公は、漫画版でも健在であります。
池田屋事件の後の京で突如発生した残虐な殺人事件。それは、武器商人のカウフマン商会から脱走してきたアメリカ人ジョージによるものでありました。
実はそのジョージこそは商会が輸入してきた不死の存在・ゾンビ。ゾンビの兵士化を目論む商会は密かにジョージらゾンビを京に持ち込んだものの、商館の人間を殺してジョージが脱走したのであります。
そんなゾンビと出くわしてしまったのが、新選組の不良隊士・屑山下衆太郎。名前の通りのゲス野郎である屑山は、偶然出くわしたジョージを、山崎烝や一番組見習いの火藤純とともに取り押さえたものの、その際に、既にゾンビに噛まれた他の隊士に噛まれてしまうのでありました。
一方、商館の殺し屋・唐人エックスは、唯一知性を残したゾンビであるジョージ奪還のため、街で増殖したゾンビを率いて新選組屯所を襲撃。折悪しく隊士のほとんどが出払っている中、土方・原田・火藤、さらに土佐弁で拳銃を操る謎の男が加わっての攻防戦が始まることとなります。
そしてその中でついにゾンビ化した屑山は……
と、映画版の監督・脚本を担当した渡辺一志の原作による本作は、基本的に映画の設定をベースにしつつ、連載が全四回ということもあって、かなりコンパクトにまとめた印象。
分量としては中編クラスなのですが、作画を担当するのが叶精一ということもあって、妙なインパクトが残ります。
(特に、映画では男性であった唐人エックスが、こちらでは何故かサディスティックな金髪美女になっているのが、実に「らしい」)
物語の方も、一見怪物のジョージが実は知性を残しており、謎の土佐弁の人とワールドワイドな意志疎通をしてしまうのはなかなか面白いところ。
ここでゾンビと人の線引きにまで踏み込んでいれば、屑山ゾンビの登場によるラストの展開もまた違って見えるのではないか。というのは贅沢の言い過ぎかもしれませんが……
さて、冒頭で新選組とゾンビの組み合わせの意外さに触れましたが、実は小説などでは幾つか見られるこの組み合わせであります。
考えてみれば、幕末を舞台に、知名度があり、ある程度遊撃隊的に動ける戦闘集団といえばやはり新選組。個人対個人の戦いではなく、(少なくとも作品の背景では)集団対集団の戦いに展開していくことも多いゾンビもので、対ゾンビ戦力として使えるのは新選組、ということなのでしょう。
本作は、そのゾンビ新選組時代劇の系譜に属する作品。新選組を謳いつつ、登場するメジャー(実在)どころが上に挙げた三人のみというのは残念なところではありますが、ゾンビ時代劇好きとしては読まざるを得ない作品でありました。
なお、本書は廉価版コミックとして刊行されましたが、先に述べたとおり分量としては中編ということもあり、さいとう・たかを『血闘! 新選組』、深谷陽『ざん斬り 土方歳三伝』、あだちつよし『沖田総司 鬼始末』、三山のぼる『剣客情話 土方歳三夢鏡』と、その他の作家による新選組漫画が採録されているのが要チェック。
単行本化されにくい時代短編を読むことができるというのも、本書の価値でありましょう。
『新選組・オブ・ザ・デッド』(叶精作&渡辺一志 リイド社SPコミックスポケットワイド) Amazon

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