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2015.05.18

『なないろ金平糖 いろりの事件帖』(その一) 超能力探偵のフェアなミステリ

 日本橋の金平糖専門店「七ツ堂」の一人娘・七ツ瀬いろりには、人には言えないチカラがあった。それは人や物に触れることでえその過去や未来を視ることができる千里眼。七色の金平糖を食べることで、それぞれ異なるチカラを発揮できる彼女は、愛猫で友人のジロとともに、様々な日常の謎に挑むが……

 『帝都探偵 謎解け乙女』『からくり探偵・百栗柿三郎』と、コミカルでユニーク、しかしあっと驚くような仕掛けが用意された作品を発表してきた伽古屋圭市の大正ミステリ第三弾が、本作『なないろ金平糖 いろりの事件帖』であります。

 これまでの二作が期待を上回るような作品であっただけに今回ももちろん期待してしまうのですが、何と今回はいわゆる超能力探偵ものという、匙加減が難しい内容。
 二度あることは三度あるのか、三度目の正直なのか――期待と不安を胸に読んだのですが、いやはや申し訳ありません。今回もやられました。

 本作の主人公・いろりの持つ能力は千里眼。実家の金平糖屋の七色の金平糖を口にすることにより、触れた人や物の過去の記憶、はたまた持ち主現在の状況や、未来に起きることなど、それぞれ微妙に異なるチカラを発揮できる少女であります。
 幼い頃に起きたある事件が元でこのチカラを身につけた彼女は、その際に出会い、言葉を交わすことができるようになった猫・ジロとともに、周囲に起きる様々な事件に挑むことになって……

 というと、むしろ魔法少女もののような設定ですが、しかし本作は様々な仕掛けにより、本作を見事にミステリとして成立させてみせます。
 その最たるものは、いろりのチカラにかけられた制限でありましょう。

 と言っても、回数制限ではありません(回数制限もあるのですが)。ここでいう制限とは、彼女の千里眼にも視えないものがあるということ――すなわちチカラのルールであります。
 そう、あくまでも彼女の千里眼は、他者の(人のみならずジロもOK)記憶や、物(に焼き付けられた他社)の記憶を読みとるもの。そこから得られるビジョンは、あくまでも媒介となった者/物の視点に留まるのです。

 これは、言い換えれば、視えるのはその視点からの「事実」のみであり――「真実」は、そこから彼女自身で導き出さなければいけないのであります。
 限られた情報を分析して隠された答えにたどり着く……それは紛れもなく、ミステリと呼ぶべきでしょう。

 事実、本作においては、千里眼で真実を見抜いておしまい、などというお話はどこにもありません。そこで描かれるのは――これまでの作者の作品同様――あくまでもフェアに我々読者にも提示されていた情報をもとにした、それでいて「アッ、そう言われてみれば!」という一点の矛盾から解き明かされる真実の存在なのです。
 対象となる事件が比較的身近なものが多いためか、本作は「日常の謎」ものに分類されるのかもしれませんが、しかしミステリとしての骨格は、あくまでも本格派であります。

 しかし、本作の素晴らしい点はそれだけに留まりません。それは――長くなるので次回に述べましょう。


『なないろ金平糖 いろりの事件帖』(伽古屋圭市 宝島社文庫『このミス』大賞シリーズ) Amazon
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