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2015.05.15

仲野ワタリ『ざしきわらわら 猫手長屋事件簿』 対決、座敷わらしvs座敷わらし!?

 招き猫文庫もスタートしてそれなりの期間が経ち、シリーズものの第2弾が登場するようになりました。本作も、『猫手長屋事件簿』シリーズの第2弾。猫手長屋の暇人大家、実は魔物退治のエキスパートの代三郎と、神通力を持った猫の栗坊が、「座敷わらし」を巡る事件に挑みます。

 ある日、副業の茶屋の常連客から代三郎が聞いた噂話。それは、霊験あらたかと称して高額なお札を売りつけ、断食療法を進めるという修験者にまつわるものでした。

 その修験者の言うとおりにすれば、何と家に福を呼び込む座敷わらしがやってくるというのですが――しかし断食のし過ぎで命を落とす者のみならず、お札を貼った家から金品が消えるという事件が連続。
 背後に魔物の陰を感じ取った代三郎&栗坊が乗り出すこととなります。

 というのも、江戸の座敷わらしの多くは彼の顔見知り、その座敷わらしに訪ねても心当たりはなく――いやむしろ彼らは自分たちの名前(?)を騙って悪事を働く連中に怒り心頭。
 やがて、座敷わらしたちの力を借りて修験者を追う代三郎の前に、ある寺の存在が浮かび上がるのですが……


 長屋をはじめ、江戸に暮らす様々な人々の姿と、跳梁する奇怪な魔物との対決と――人情もの+妖怪退治ものの二つの側面を持つ本作。
 前作は、物語運びの点で少々気になるところもあったのですが、設定紹介は前作で全て済ませてしまったこともあり、本作は緩急をつけつつも、終始テンポよく物語が展開していくため、最後まで気を逸らされることなく楽しむことができました。

 本作の最大の謎であるニセ「座敷わらし」の正体も、なかなかに意外性のあるものであり、何よりもその正体自身が、人情ものとしての本作に大きく関わってくる……と申しましょうか、私のようなすれっからしの読者でも心揺さぶられるものなのが、何とも心憎いところであります。

 主人公の代三郎の方も、本業(?)の魔物退治のほかにも、茶師(ここでは茶を入れる者、という扱いに近いですが)として、また三味線弾きとして、様々な顔を見せてくれるのが楽しい。
 茶師としての顔と三味線弾きとしての顔、相反するような静と動の姿を見せる代三郎ですが――さらにぐうたら大家と魔物退治の顔も含めて――全て彼の自由闊達な個性の中で違和感なくまとまっている点も、評価できるところです。

 あえて小うるさいことを言えば、何故今、この場所で……という、この手のお話で抑えておくべき部分のロジックが弱いのが個人的には気になるところであります。
 この点は残念ではありますが――タイトルどおりのシチュエーションになってしまう終盤の展開のにぎやかさ、楽しさもあり、妖怪ものとしては綺麗にまとまった作品であるのは間違いありません。


『ざしきわらわら 猫手長屋事件簿』(仲野ワタリ 白泉社招き猫文庫) Amazon
ざしきわらわら 猫手長屋事件簿 (招き猫文庫)


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