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2015.06.29

『戦国武将列伝』2015年8月号 神の子と鬼の子と

 気がつけばもう偶数月の月末ということで、『戦国武将列伝』の8月号が発売されました。今回は残念ながら『孔雀王 戦国転生』が作者急病につき休載であります。今回も、印象に残った作品を紹介していきましょう。

『鬼切丸伝』(楠桂)
 第2巻が発売されたばかりの本作、巻頭カラーで描かれる物語の舞台となるのは島原の乱。ある役割を果たしたことで後世に知られる山田右衛門作の目を通じた天草四郎が描かれます。

 「鬼理支丹」と蔑視され、松倉家の苛斂誅求に晒される信徒たち。ついに蜂起した彼らの旗印となったのは、数々の奇跡を見せた神の子・四郎なのですが……本作だからして、その正体は言うまでもありますまい。

 戦国時代にキリスト教の魔物が日本に侵入して、というのは、作者の作品の幾つかで見られるシチュエーションですが、今回はある意味それを裏返した……とでも言えるでしょうか。
 正直なところ、神の子と鬼の子の対決をもう少しじっくりと見たかったところですが、無情な結末は本作らしいところです。

 しかし幕末を除けば江戸時代最後の戦いと言うべき島原の乱の時点でも、まだ人間不信の気がある少年は、いつその想いを変えるのか……(まあ、島原の乱の時点で戦国ではないのですが)


『バイラリン 真田幸村伝』(かわのいちろう)
 ついに始まった「第二次上田合戦」――徳川秀忠、本多正信、そして真田信幸の大軍が迫る中、ついに幸村の「舞い」が始まることに……

 と、戦いが嬉しくて本当に舞い踊りだす幸村はちょっと変な人に見えてしまいますが、その戦略はいつもながら(?)お見事。
 陽動をかけておいて自らは一気に――というのは後の彼の戦いを思わせますが、その中に一片の狂気を感じさせるのがいい。

 その弟に若干引きながらも、きっちりと受け止めてみせる信幸も格好良く、おそらくはこれから始まるであろう幸村の真の戦いも期待できます。


『セキガハラ』(長谷川哲也)
 前回、ついに小早川が登場したことにより、ほぼ出揃ったように思われる西軍の面々。石田・上杉・毛利・小早川の頂上会談を通じ、黒田如水の真の能力が推理されるのですが……

 いやはや、これがこう来るか、と言いたくなるようなとてつもない能力。なるほど、ラスボス候補に相応しい能力ですが、彼がそれに目覚めるに至った経緯に、あの有名な史実を持ってくるのが面白い。
 そんな如水との戦いを、○○を守るための戦いと断じる飛躍っぷりも、実に本作らしい豪快さであります。

 と、その一方で謎の美少女・お玉が登場……本人よりも、これから登場するであろう夫がどんなキャラに描かれるかが心配……いや楽しみです。


『政宗さまと景綱くん』(重野なおき)
 前回の引きで語られた奥羽統一を阻む「厄介な敵」の正体――については冒頭であっさり目に語られ、今回のメインとなるのは、景綱の妻の懐妊にまつわるエピソード。

 政宗にまだ子がないのを憚り、折角授かった自らの子を……というのは、景綱にまつわる逸話の一つですが、現代人から見ればドン引きもののこの逸話の印象を、ギャグを絡めることで和らげてみせるのはさすがと言うべきでしょう。

 何よりも、このエピソードにほぼ二話を費やすのが、実に作者らしい視点だと嬉しくなるのであります。


 その他、民話めいたシチュエーションからの暴走ぶりも楽しいしりあがり寿『無常草紙』と、今回もレギュラー陣の活躍が印象に残る一冊であります。


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