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2015.06.04

ガイ・アダムス『シャーロック・ホームズ 恐怖! 獣人モロー軍団』 今度の世界はSF!?

 ロンドンのロザハイス周辺で相次いで発見された惨殺死体。事件の背後にモロー博士の存在を察知したマイクロフトは、ホームズに捜査を依頼する。折しも、かつてモロー博士の島から生還した男・プレンディックも謎めいた死を遂げていた。捜査を開始したホームズとワトスンの前に現れた者とは……

 かのシャーロック・ホームズが他の分野の有名人たちと競演した『シャーロック・ホームズ 神の息吹殺人事件』の続編であります。
 前作は幽霊狩人カーナッキ、妖怪博士ジョン・サイレンスと、ホームズと同時代のオカルト界の有名人総出演という趣がありましたが、オカルトの次はSFだ! ということでしょうか、今回の題材となっているのは、タイトルから一目瞭然のとおり、H・G・ウェルズの『モロー博士の島』。
 ウェルズとホームズといえば、『宇宙戦争』とのコラボがありましたが、モロー博士との組み合わせは、私が知る限りではこれが初めてではありますまいか。

 高名な科学者でありながらも、おぞましい動物実験に手を染め、学界を追放されたモロー博士。助手とともに孤島に渡った博士は、そこで動物たちを人間のように改造、知性を与える実験を続けておりました。
 そこに漂着した青年プレンディックは、博士の所業をつぶさに観察するのですが、暴走する獣人たちに博士と助手は殺され、命からがら島を脱出するのでした……

 というのが『モロー博士の島』のあらすじですが、本作はその後日譚。今度はロンドンで獣人を思わせる存在による猟奇殺人事件が連続、実は生きていたモロー博士がロンドンに舞い戻ったのではないか……と大胆な推理を巡らせたマイクロフトの依頼で、ホームズとワトスンは、ロンドンの闇を駆け巡ることになります。
(ちなみに冒頭で語られますが、実はモロー博士は、イギリス政府の資金援助の下、超人兵士を開発していた! という衝撃的な設定)

 前作に比べると、単一の作品が題材ということで一見地味に見えなくもありませんが、もちろん今回も続々ゲストが登場。
 『失われた世界』『月世界最初の人間』『地底旅行』『地底の世界ペルシダー』……先に述べたように、今回はSF縛りで登場するあの人物、この人物の顔ぶれには、クロスオーバー好きの私などはただニコニコするほかありません。

 そんな中でも同じ作者ということもあって、こういう時には大活躍のチャレンジャー教授を加えたチームが繰り広げるのは、ロンドンの闇を縦横無尽に駆ける大冒険。
 本作の作者は、『SHERLOCK』のオフィシャル研究本の著者としても知られますが、本作のノリはどう見てもカンバーバッチというよりRDJのホームズ――と申し上げれば、作品の方向性はおわかりいただけるのではないでしょうか。(ブロマンス要素はあまりありませんが……)

 というわけで――ホームズの長編パスティーシュにはままあることではありますが――推理よりもアクションに重点が置かれた本作ですが、ミステリ要素は数は少ないもののニヤリとさせられますし、何よりも、原典に対してフェアな態度が感じられるのが嬉しい。
 前作は正直に申し上げて、そのどちらにおいても些かアンフェアなものが感じられただけに、今回は最後まで興を削がれることなく、豪快な物語を一気に楽しむことができました。

 さて、オカルト、SFと来たら次は何が来るのか……シリーズ第3弾は本国でもまだ刊行されていないようですが、ここまで来ると、次の作品も期待せずにはおれません。


『シャーロック・ホームズ 恐怖! 獣人モロー軍団』(ガイ・アダムス 竹書房文庫) Amazon
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