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2015.07.01

にわのまこと『鬼界の里 真説「ザ・モモタロウ」』 もう一つのどんでん返しに繋がる世界

 ここしばらく、ユニークな作家、作品の登場が続く『コミック乱』誌ですが、8月号に掲載されたのはさすがに予想だにしていなかった作品。かつて少年ジャンプで人気を博した『ザ・モモタロウ』の外伝とも言うべき時代ホラー『鬼界の里 真説「ザ・モモタロウ」』であります。

 戦乱の時代、旅を続けるシズクとジンの姉弟。ジンが赤ん坊の頃に野武士に両親は殺され、シズクも右腕を失って支え合いながら流浪してきた二人がたどり着いたのは、異様な雰囲気が漂う村でありました。
 そこで曰くありげな老人と出会った二人は、勧められるままに老人の家を訪れるのですが、そこで二人を待ち受けていたものとは……


 桃太郎をはじめ、おとぎ話の主人公たちが現代にプロレスのリングで大暴れするコミカルな格闘漫画だった『ザ・モモタロウ』。
 その前史とも言うべき本作が掲載されると聞いた時、果たしてどのような作品になるか全く想像もつかなかったのですが、蓋を開けてみれば、本作のジャンルはいわば時代伝奇ホラーでありました。

 人の血が数多流される時代、鬼伝説を背景とした本作の展開は、ヒロインの設定を見ればある程度先の展開の予想はつかなくもありません。
 しかし作品全体を覆う陰鬱なムードが(ちなみにコミカルな作品も多い作者ですが、暗さやウェットな部分を感じさせる作品も、元々巧みであります)上手く働いてミスリーディングに繋げ、どんでん返しに繋げていくのがなかなか面白い。

 そして何より、全くムードが違う内容に、名前だけ借りた別ものかと思わせておいて、ある一点でもって一気に『ザ・モモタロウ』前史として世界観を繋げてみせるのは、ファンとしては何ともたまらぬもう一つのどんでん返しでありました。
 なるほど、この後にアイツと因縁が生じたり、この後にアイツと戦うこととなるのか……などと想像するのも楽しい作品でありました。


 ちなみに、冒頭でも触れましたが、ここしばらくは時代劇画プロパーというわけではない作家の登板が多いのが面白いところ。
 今回のにわのまことのほか、連載陣でも、宮川輝、高枝景水、高浜寛、山崎浩、海野螢と、こうして並べてみるとちょっと時代劇画誌とは――もちろん良い意味で!――思えない顔ぶれで、私のような人間にとっては何とも嬉しくなってしまうのであります。


『鬼界の里 真説「ザ・モモタロウ」』(にわのまこと リイド社『コミック乱』2015年8月号掲載) Amazon
コミック乱 2015年8月号 [雑誌]

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