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2015.08.14

水上悟志『戦国妖狐』第15巻 決戦の先の、そのまた先に待つものは

 戦国時代を舞台に、人と闇(かたわら)と――さらに異なる時代から現れ、闇たちを操る無の民との戦いを描く『戦国妖狐』もついに第15巻であります。第13巻から始まった無の民との決戦はまだまだ続き、どのような結末を迎えるのか、全く見えませんが、そのテンションは衰えることがありません。

 千夜の中の核を狙い、無数の闇を洗脳して手駒とする無の民。その術中には彼の父・神雲が、そして巨大なる雲の闇・万象王までもが陥り、戦力差は絶望的と思われたのですが――
 しかし、千夜のライバルたる黒竜ムドが、そして彼の師であり神雲の親友であった道錬が、月湖がなうが真介が断怪衆が……これまで物語に登場した様々な人々が駆けつけ、一気に千夜たちが攻勢に回るという素晴らしく盛り上がる展開を踏まえて続くこの第15巻。

 神雲と道錬の因縁に決着が付き、真介の想いが闇たちを救い、残るは万象王と無の民のみ……と、これ以上に盛り上がることがあるのかと思ってしまいますが、しかしまだまだ千夜が強くなっていくように、まだまだ物語はそれ以上に盛り上がっていくのだから恐ろしい。

 千夜とムド、もはや常人いや闇の域を遙かに超えた両雄ですら敵わぬ万象王の真意は。死闘の果てに持てる力の全てを使い果たした神雲と道錬の望みとは。妖人・野禅が語る万象王攻略のための唯一の、しかしまず実行不可能な方法とは――
 その全てが絡み合い、一つとなったところに生まれるのは、この決戦でもおそらく最大のクライマックス。ベタと言わば言え、これはむしろ王道だ、と言わんばかりの展開は、今日日、少年漫画でも珍しいほどの直球ど真ん中、それだけにこちらの心を大きく揺さぶるのであります。

 そしてその中心にいるのはもちろん千夜であります。真介の教えを、月湖の想いを、そして神雲と道錬の意志を胸に――雲を跳び越えて駆ける彼の姿は、もはや異形と言うほかない姿ながら、しかしその中にあるのはどこまでも純粋な想い。
 この巻のラストで描かれる対決、かつては一敗地に塗れた無の民を相手にしての対決は、そんな彼のこれまでの旅を、そして本作という物語の総括とも言うべきものであり――そしてそれを、これまで果てしない力と力のぶつかり合いを描いてきたすぐ後に描いてくるのが、何とも心憎いばかりなのです。


 それにしても、ここまで盛り上がってしまえば、後は結末まで一直線、と言いたいところですが、それがそうとは言い切れないのが本作の楽しくも恐ろしいところ。
 現に、決戦も終盤であろうこの段階に来て、意外な――しかし存在自体は予告されてきた――新キャラクターが投入されてくるのですから、まだまだ油断できません。

 そして何よりも、この戦いの真の目的である千本妖狐・迅火との対峙はまだこれから。
 そこに何が待っているのか、そこで新キャラクターがどのような役割を果たすのか――あるいはあっさりと結末を迎えるかもしれず、あるいはまだまだここから新しい物語が始まるのかもしれません。

 しかし一つだけ言えるのは、本作がどの道を行くにせよ、それを――物語の醍醐味を存分に味あわせてくれる本作のたどり着く先を――見届けるのが楽しみでならないということなのです。


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