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2015.08.10

武村勇治『天威無法 武蔵坊弁慶』第5巻 激突! 突き抜けた力を持てる者

 専横を極める平氏に対し、己の巨大すぎる力を持て余す弁慶と、美しき復讐鬼と化した義経が挑む……という域を遙かに越えた、恐るべき伝奇活劇となってきた『天威無法 武蔵坊弁慶』。その中心にある兵法書・六韜の一つを持つ最後の男・木曾義仲の登場は、物語は更なる波乱をもたらすことになります。

 持つ者に人知を超えた強大な力を与えるという六韜。謎の男・鬼一法眼が宋から持ち帰った六巻は、それぞれ平清盛、後白河院、源頼朝、藤原秀衡、木曾義仲、そして平維盛の手に渡ることとなりました。

 六韜まであと一歩、というところまで迫りながらも、彼と、そして鬼一法眼と奇しき因縁で結ばれた鬼若改め武蔵坊弁慶の妨害で六韜を逃した義経は、ひとまず奥州の秀衡のもとに向かうのですが――そこで出会うことになるのが、義仲であります。

 従兄弟同士に当たる義経と義仲でありますが、しかし同族が血で血を争う争いを繰り広げるのが武家の習い。事実、義仲の父は義経の父に討たれており、仇とも言うべき間柄なのですが……

 そんな状況の中、とある事件がきっかけで、己の身分を伏せたまま、義仲の愛妾である巴御前と対決することとなった義経の妹・遮那。武芸の腕前も、飲む酒の量もほとんど互角の二人は、強敵と書いて友と読むような関係となっていきます。
 そうとも知らず、義経と弁慶は遮那奪還に一計を案じて――

 と、前半は本作には比較的珍しく、コミカルかつ微笑ましい展開が続くのですが、しかし義仲が義経の正体を知った時、物語は一転ハードなバトルものに変貌することになります。
 特に、互いに規格外の肉体を持つ弁慶と義仲の正面切っての殴り合いは、作者らしいコミカルさギリギリの豪快さが圧巻。その一方で、前の巻で描かれた暗黒面全開で暴れ回る義経も、またらしいと言えばらしいと言える迫力であります。

 ……が、これはまだ序の口。全力のお前で来いという弁慶の徴発に乗り、遂に六韜の一つ・武韜の封印を解いた義仲。その力が極まるところに生まれた姿は……デ○○○ロ!? というのは冗談としても、少なくとも時代もの・歴史ものの域を突き抜けた存在であることは間違いありません。


 が、それがいい。というよりこの突き抜け方こそ、こちらが待ちに待っていたもの。六韜が登場して以来、尋常なものでなくなってきた本作の勢いとテンション。それにすっかり魅せられている身としては、これこそが待ちに待ったというべき展開であります。

 さて、そんな突き抜けた六韜の力に対し、自らはそれを手にすることを拒んだ弁慶が、そしてそれの力を渇望しつつもいま一歩届かない義経が、如何に相対するかというのは、今の本作において最大の命題でありましょう。
 その点については、今回はまだまだこれから、と言ったところ。個人的には弁慶が今回ちらりと見せたモノについては、ちょっとそれはズルいのではないかと思いましたが……


 何はともあれ、まだまだ六韜を巡る物語は端緒に着いたばかりと言うべきでしょう。
 この巻のラストではついに後白河法皇の持つ六韜の能力も登場、義経や弁慶の預かり知らぬ場でも六韜所有者同士の戦いが勃発しそうなところ、こちらも楽しみになるのであります。


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